(あれ、ぷれすてだ)
(なにフラフラしてるんだろう)
ぷれすて?
あっ、清川さん。
とうとう決勝だね。
うん、今になって緊張してきてさ。
…清川さんは慣れてるだろうけど。
そんなことないよ、私だって緊張してるよ。
そうなんだ。
でもね、最近は、ある人の顔を思い出すと、落ち着くの。
(あ、言っちゃった…。)
(ぷれすての事だって気がついたかな…。)
(あ、頬が熱くなってきちゃった)
よし、じゃあ、俺は清川さんの顔を思い出して頑張ろう。
えっ…。
(い、今なんて…。)
(そ、それってどういう意味なの?)
(き、期待しちゃうじゃない…。)
さぁ、清川さん。女子の決勝の方が先でしょ。急ごう。
あ、そ、そうだね。
【放送】第4のコース、清川望。きらめき高等学校。
清川さん、がんばれ!!
ぷれすて…。
(絶対、負けたくない…。)
(ううん、絶対負けない!!)
パン!
(あぁ、始まる…。)
(何だか、自分の時よりどきどきして来ちゃった…。)
【放送】第6のコース、小波駒人。きらめき高等学校。
ぷれすて、がんばれ〜!!
【みんくん】望が大声だして応援してるなんて珍しいね。
みんくん…。
【みんくん】ほら、始まるよ。一緒に応援しよ。
うん。
パン!
【解説者】さぁ、男子100m自由形決勝が始まりました。
がんばれ〜!!
【みんくん】負けたら承知しないぞ〜!!
【解説者】さぁ、第6コースの小波が速い。
5mほどの差を付けて、今、ターンしました。
【みんくん】ほらほら、小波君勝ってるよ!
う、うん!
(ぷれすて、頑張って!)
(後50m…。)
(あ、駄目だ。胸がつぶれそう…。)
【みんくん】望、目をつぶっちゃ駄目!
後できっと後悔するよ。
ちゃんと最後まで応援してあげなきゃ。
う、うん。だけど…。
(声が出ないよ…。)
【みんくん】小波君は、最後まで望を応援してたんだよ。
えっ…。
【みんくん】小波君は、最後まで目をそらさずに望を見てたんだよ。
望はそれで良いの?
(ぷれすて…。)
私、最後まで応援する!
【みんくん】そう来なくちゃね。
【解説者】さぁ、後10mほどですが…。
ここで2番手に差を詰められてきております。
がんばれ〜!がんばれ、ぷれすて〜!!
【みんくん】小波君!この応援に応えなきゃ、男じゃ無いぞ!!
【解説者】さぁ、第3コースの○○が速い、○○が速い。
ぐんぐん差を詰めてきております。
しかしゴールまで後僅か。
小波逃げ切れるか!?
さぁ、今ゴール!!
優勝は…。
□□高校の○○!!きらめき高校の小波、惜しくも破れました〜!
(ぷれすて…。)
【みんくん】の、望、大丈夫!?
えっ?
【みんくん】死にそうな顔してるよ。
うん…、私は大丈夫…。
【みんくん】声、かけて上げなよね。小波君に。
そうだね…。
(あ、ぷれすて…。)
惜しかったね。
ごめんね、せっかく応援してくれたのに。
そんなんこと言わないでよ。
あなたの方が悔しいってことくらい、分かるんだから…。
(そんなに優しくしないでよ…。)
(あ、駄目…。泣きたいのは私じゃない…。)
(私じゃないのに…。)
あ、あれ、清川さん?
へ、変よね。なんか、自分が負けたときより…。
清川さん…。
(駄目だ、止まらない…。)
(悔しいよ…。)
(悲しいよ…。)
(あんなに、あんなに努力したのに…。)
清川さん…。
ぎゅっ。
ぷれすて?
有り難う。俺のことでそんなに悲しんでくれて。
ぷれすて…。ぷれすてぇ〜。
有り難う。俺のことでそんなに悲しんでくれて。
こうして、最後の大会は幕を閉じた…。