Trrrr…
Trrrr…
(あ、電話だ。)
(もしかして…なんて期待しても、かかって来ないし。)
(でも…。)
【母】望〜!電話よ〜!
(私?期待して行っても落ち込むだけだし…。)
は〜い!
トントントン…
【母】はい。小波君から。
え?本当?
【母】…隠し事の出来ない子ねぇ…。
何が?
【母】いーえ。ごゆっくり。
(顔に出ちゃってるかなぁ)
はい。もしもし。
『もしもし。小波ですけど。』
あ、あの…ぷれすて?…何か、御用?
(なに照れてるのよ!あ〜、顔熱くなって来ちゃった…。)
『今度の日曜日に、植物園に行かない?』
うん。いいわよ。
『それじゃあ、植物園の前で待ち合わせという事で。』
わかった。遅れずに来なさいよ。
『それはお互い様。それじゃ。』
ガチャ
(うふふ…来週はデート!)
【母】(ニコニコ笑いながら望を見つめてる)
な、なによぉ!
【母】正直ねぇ…さっきまで元気無かったのに
う、うるさいなぁ。もう。
花ってきれいよねぇ…。
清川さんって植物が好きなんだねぇ。花壇でも育ててるし。
そりゃ、そうよ。私だって女の子なんですからね。
清川さんは、どの花が一番好きなの?
私の好きな花?
…うーんと、あ、あった。もう咲いてるんだ、シクラメン。
シクラメン?
ほら、ここに咲いてるじゃない。私、この花が一番好きなんだ。
へぇー。きれいな花だね。
そうでしょう?花言葉も知ってるわよ。
なんていうの?
シクラメンの花言葉はねぇ…『内気な心』っていうの。
『内気な心』かぁ…いい花言葉だなぁ。
…私の心と同じね…。
え?何か言った?
ううん、なんにも。さあ、みて回ろうよ!
え?あ、ああ。
・
・
・
今日はとっても楽しかったなぁ。また今度誘ってくれる?
また電話するよ。
ぷれすて、一緒に帰らない?
帰ろっか。
なんだか清川さん女の子っぽくなったね。
なによぉ。女だと思ってなかったって言うの?
そうじゃなくてさ、最近なんとなくね。可愛くなってきたっていうか、
なんていうか…。
そりゃそうよ。努力してるし。そうしないと気にも留めてもらえそうに
無いしね。
誰に?
え?い、良いじゃない。じゃあ、私ここで。じゃあね。
ああ。じゃあ、また明日。
(なんで、あそこで言えなかったんだろう…。)
(絶好のチャンスだったのに…。)
(やっぱり私って『内気な心』なんだなぁ…。)