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■「1996.11.xx」ときめき!伝説

[No.0000000018]高野

  がちゃ。きー。ばた。
【みんくん】あー、いいお風呂だったぁ。望んちのお風呂、広くっていいねぇ。
  うちなんかユニットバスでしょ、狭くてやんなっちゃう。
【望】みんくんねぇ。おしゃれーで通ってるわりにはおばさんなんだから。
【みんくん】いいじゃない。望と二人っきりの時くらいさ。
【望】気持ち悪いなぁ。くっつくなって。

  (その日、友達の みんくんが家へ泊まりにきてた。
  (みんくんとは小学校5・6年の同級生で、彼女の家の引っ越しで
   別々の中学に通うことになったが、きらめき高校で再会し昔のように
   つきあうようになった。

【みんくん】〜なんだって、信じられる〜?
【望】ふーん、そんなもんかなぁ。
  …さて、明日も早いし。寝よっか。
【みんくん】えー、まだ11時前だよ。
【望】私はロードワークがあるから5時起きなの。わかった?
【みんくん】はいはい。記録保持者は辛いのね。でもさ、もちょっとおしゃべりしよ。
  電気消してさ、眠くなったら寝ちゃっていいから。
【望】ま、いいよ。でも、私寝付きいいからね。じゃ、とりあえずおやすみ。
  みんくん。電気のスイッチそこね。
【みんくん】もー!冷たいんだから。少しは親友を大切にしなさいよね。

パチッ。…ごそごそ。

【みんくん】……ね、望さ。好きな人、いる?
【望】ちょ、ちょっとみんくん、なんの話かとおもえば…。
【みんくん】まぁまぁ。で、いるの?
【望】わ、私はいないよ。
【みんくん】ふーん、そう。まぁいいや。私はね、いるんだ…。
【望】…そう。
  (わっ。なんだろこの雰囲気。)
【みんくん】…誰だと思う?
【望】誰っていわれても…。
  (みんくんの好きなタイプって、想像が…。)
【みんくん】ヒント。…水泳部のぉ、同じ学年で高校に入って水泳始めた人。
【望】(それって、まさか…。)
  えー。じゃぁ、んー、江田くん?
【みんくん】…くすくす。はずれ。
  (えっ、だってその条件じゃ2人しかいない…。もう一人は…。)
【望】小波くん?
【みんくん】うん、あったり。実はね。
【望】(えー、だって、そんな、いつのまに…。)
  そ、そう。それで、みんくん小波くんと、もうつきあってるの?
【みんくん】ん。2学期始まってからかな。あたしから告白したら、彼、OKって。
【望】(2学期っていったら、もう3か月くらい経つじゃない。嘘でしょう?)
  (あんなに優しくしてくれたのに。あれってじゃぁなんだったんだろ?)
  (夏の海の二人だけの思い出は?修学旅行で私を守ってくれたのは?)
  (私は何を期待してたんだろう。)
【望】……。
【みんくん】のぞみくん。
【望】……。
【みんくん】望・くん。
【望】えっ、はい。なに?
【みんくん】う・そ。
【望】え?
【みんくん】小波くんとつきあってるって、う・そ。
【望】えー!だって、なんでそんなこと。みんくん、ひどいよ。
【みんくん】ひどいって、どういうこと?(^_^)
【望】だって、小波くんとつきあってるって、嘘ついて…。
  あっ。だ、だから。そんなこというのは…。
【みんくん】…くすくす。…ご・め・ん。
【望】もー。みんくん、ひどい。
【みんくん】でもさ、のぞみ。望ももっと自分に正直になった方がいいよ。
  望見てるとさ、じれったいっていゆーか、危なっかしくて、ついつい
  お節介になるのよね。望は自分の気持ち、分かってる?
【望】だって私、小波くん…、男の子のこと好きになるなんて考えたことないし、
  それに小波くんって女の子には優しいトコあるし、私にだけって訳じゃない
  でしょ?それにほら、藤崎さんとも仲いいでしょ?
【みんくん】そんなこと、望に関係ないじゃない。
【望】……。

【みんくん】望さ、うちのがっこの伝説って知ってる?
【望】伝説?どんな?
【みんくん】伝説の樹の話。知らない?
【望】……。
【みんくん】そ。望は推薦だし、水泳一直線だから知らないかもしれないけど。
  有名なんだよ。伝説目当てにうちのがっこ入る娘も結構いるんだから。
【望】どんな話?
【みんくん】がっこのね、校庭のすみに大きな樹、あるでしょ?
  すっごく古い樹なんだけどね。
  あの樹の下で、卒業の日に女の子から告白して始まる恋愛はね、
  絶対だめにならないんだって。…絶対にね。
【望】ふーん。ホントかなぁ。
【みんくん】ホントだって。だから伝説なんじゃない。
【望】じゃ、みんくんは信じてるんだ。
【みんくん】ん。信じてるよ。
  あたしってさ、昔からキューピット役が多かったじゃない。
  告白仕掛人なんていわれたこともあるけど、友達と私の好きだった人を取り
  持ったことがあるんだ。すっごく、嫌な思い出。
  その時思ったんだ。高校いったら超かっこいい彼を見つけて、ずーっと自分
  の男にするんだって。
  その為に、がんばってうちのがっこ入ったんよ。
【望】そうだったんだ。でも、なんで私に…。
【みんくん】今の望には、そういう伝説が、おとぎ話が必要なんだよ。わかる?
【望】……。
  (わたし、小波くんのこと好き、なのかな…。)
  (小波くんは優しい。小波くんは楽しい。小波くんは力強い。)
  (小波くんは…。)
  (あ、私の中には小波くんがたくさんいるんだ。みんな大切な小波くんだ。)
  (こうゆうのって、好きってこと?…恋、なのかな。)

【みんくん】望。おやすみ。
【望】おやすみ、みんくん。

  (次の朝、私は初めてロードワークをさぼった。
  (外が明るくなって、カーテンが透かし模様になるまで眠れなかった。
  (みんくんは寝てたようだけど、ホントかな?
  (だって、朝起きて「おはよう。」といった彼女の目は、真っ赤だったもの。


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