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■「1995.11.xx」きらめき!ショッピング

[No.0000000001]山本作
[No.0000000018]高野改

・自宅

【望】(ごそごそ、ごそごそ)
  あっれ〜、おかしいなぁ。何処にしまったっけ?

【母】望?何してるの?
【望】あ、お母さん。私のチェックのブラウス知らない?
【母】ブラウス?去年卒業パーティに着ていった?
【望】そう、それそれ。何処にしまったっけ?
【母】冬物整理するときに捨てちゃったでしょ。胸が苦しくなったからって。
【望】あ、そうだっけ。
【母】何かあるの?ああいう服は、普段絶対着ようとしないくせに。
【望】来月、クリスマスパーティに誘われてるんだ。
【母】まぁ、そう。クラスメート?それとも彼氏?
【望】そんなんじゃないって。伊集院って知らない?
【母】まぁまぁ、あの大金持ちの?
【望】そう。そいつが誘ってくれたんだ。
【母】それじゃあ変な服は着ていけないわねぇ。
【望】だろ?だから探してたんだけど…。
【母】分かったわ。今度の休みにでも服を買っていらっしゃい。
【望】え、良いの?お母さん話せる〜。
【母】そのかわりお母さんは用事があるから自分だけで行くのよ。
【望】え〜、私センス無いのになぁ。
  (どうしよう、変な服選んじゃったら…。)
  (あ、そういえばあいつ結構おしゃれだったっけ…。)
  (決めた。あいつに付き合ってもらおう。)

・学校

【望】やあ、ぷれすて。
【小波】清川さん。どうしたの?
【望】今度の日曜日、空いてるかな…?
【小波】空いてるけど、何?
【望】買い物に付き合って欲しいんだけど、駄目かな?
【小波】いいよ。一緒に行こう。
【望】よし。それじゃ、どこで待ち合わせる?
【小波】ショッピング街の入口でいいかな?
【望】それでいいよ。忘れるなよ。

【望】(やったぁ。)
  (これで多少はましな服が選べるかな…。)
  (日頃水泳教えてるんだから、これぐらい付き合わせたって良いよね。)

【みんくん】の・ぞ・み!
【望】あ、何?
【みんくん】見てたわよ〜。今の小波くんでしょ?デート?
【望】ち、違うよ。そう言うのじゃ無いって。
【みんくん】一緒に買い物なんて、デートじゃなくてなんなの?
【望】あ、だってあいつ、結構センスいいし…。
【みんくん】ほうほう、君は友人である私のセンスより彼の方が信用できるわけだ。
【望】あっ…。
  (そういえば私、他の誰かに付き合ってもらうこと全然考えてなかった…。)
  (なんでだろう?)
【みんくん】まぁ、他の子には黙っててあげるから。帰りになんかおごりなさいよ?
【望】……。
  (誰かに付き合ってもらう事考えたときに真っ先にあいつが浮かんで…。)
【みんくん】望?
【望】……。え、何?
【みんくん】何ぼーっとしてんの。さ、部活にいこ。
【望】う、うん…。

・日曜日

【小波】今日は何を買うの?
【望】ん〜。クリスマスパーティの服をね…。
【小波】それって伊集院の?
【望】そうそう。ぷれすても来るのか?
【小波】いや、あの野郎、男にはぜんっっっっぜん声かけてこないからな。
【望】あ、そうなんだ。
【小波】土壇場でお誘いが来るかも知れないけどね。
【望】ふ〜ん。
【小波】清川さんは参加するんだ、パーティ。
【望】練習が無ければね。まだ分かんないよ。
【小波】大変だね。
【望】好きでやってることだから。

・ブティック

【望】(うひゃー、かわいらしい服ばっかりだなぁ。)
  (こんなの私には似合わないよ。)
  (ど〜しよう…。)

【小波】やっぱりおしゃれな服を探さないとね…。
【望】な、なぁ。私に似合いそうな服なんて…。
  (無いんじゃないの?)
【小波】お、これなんてどうかな。スーツっぽいけど下はミニスカートだし。
【望】こ、これ!?
【小波】良いと思うけどなぁ。チェック柄もきまってるし。
【望】可愛いけど、私には似合わないな。
【小波】ん?何言ってるの。清川さん、可愛いから似合うよ。

【望】(どきっ!)
  (ま、またそんなこと言って…。)
  (こいつ口だけはうまいんだから…。)

【望】お世辞をありがとう。でも、嬉しいよ。
【小波】お世辞なんか言う趣味は無いけどなぁ。
【望】分かった、分かった。でも、この服はねぇ。
【小波】じゃぁ、試着してみれば。
【望】えぇ、試着って、ここで?
【小波】ここじゃなくて、あ・そ・こ。ほら、試着室あるよ。
【望】あぁ。うっ、うん。そうだねぇ。し、試着してみるかなぁ。
  (まいったなぁ。こんな事になるなら大人しく買えばよかった。)
  (あいつがそばにいるのに着替えなんて…。)
  (でも、べつに目の前で着替えるわけじゃないしな。)

【望】じゃあ、着てみるから。…覗くなよ。
【小波】覗かないって。信用無いなぁ。

シャァ。

【望】(ふぅ、どうしよう。やっぱり恥ずかしいな。)
  (でも、ここまできて着替えないわけにもいかないし。)
  (着替えたふりして、これにするよっていっちゃおうか。)
  (でも、あいつは似合うっていってくれてるし。)
  (私が着てみても似合うって言ってくれるかな…。)
【小波】清川さん、どお?
【望】あ、ば、馬鹿。まだ着替え中。
【小波】そう。ごめん。
【望】(ええい。仕方ない。)
  ばさばさ。
  (なんか、恥ずかしいな。このカーテン、大丈夫だよね。)
  (服着替えるだけなのに、こんなに恥ずかしいとは思わなかったな。)
  (部活で着替えるときは平気なのにな。)
【小波】清川さん、終わった?
【望】う、うん。どうかな?

シャァ。

【小波】あれ、どうしたの。顔、赤いよ。
【望】え、あ、そぉ?
  こ、この服ね。やっぱり可愛すぎて恥ずかしいかな、なんて。
【小波】そんなことないよ。清川さんによく似合ってるよ。
【望】そ、そう。ありがとう。これに決めるよ。

・自宅

【望】ただいま。
【母】お帰り、早かったわね。
【望】何で?買い物だけだからこんなもんでしょ?
【母】まぁ、ホントに買い物だけして帰ってきたの?
【望】うん。
【母】我が娘ながら色気のない…。
【望】な、何だよお母さんまで。
  あいつはそういうのじゃ無いって言ってるだろ!
【母】ふふふ…。やっぱり男の子と一緒だったのね?
  いつも電話かけてくる子?
【望】あ、引っかけ…。お母さんのいぢわる!
【母】引っかかるのが悪いの。
  どれどれ、彼の選んだ服を見せてごらん。
【望】もー。彼じゃ無いって言ってるのに!
  …はい、これ。
【母】へー。可愛いじゃない。柄もいいし、胸元のリボンも大きめで可愛いわ。
  彼、センスいいのね。着てみた?
【望】うん。
【母】よく似合ったでしょ?
【望】ま、まあね。私にしては、可愛いかなって。
【母】彼はさ、おまえが可愛いって思ってて、一番似合う服選んでくれたんだね。
【望】ば、馬鹿!もういい!

・ベッド

【望】あー、やっぱりあの服着てくの恥ずかしいな。
  あいつに選んでもらったのがばれて、噂になったりしたらどうしよう。
  みんくんなんか、むちゃくちゃ言うだろうし。
  責任とってあいつも来ればいいのに。そしたら文句も言えるし。
  でも、あいつと話してて、やっぱりとか言われちゃうと恥ずかしいな。

【望】うー、やめやめ。こんな事考えるのは。
  寝ようっと。明日も早いぞ。


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