【母】望?何してるの?
あ、お母さん。私のチェックのブラウス知らない?
【母】ブラウス?去年卒業パーティに着ていった?
そう、それそれ。何処にしまったっけ?
【母】冬物整理するときに捨てちゃったでしょ。胸が苦しくなったからって。
あ、そうだっけ。
【母】何かあるの?ああいう服は、普段絶対着ようとしないくせに。
来月、クリスマスパーティに誘われてるんだ。
【母】まぁ、そう。クラスメート?それとも彼氏?
そんなんじゃないって。伊集院って知らない?
【母】まぁまぁ、あの大金持ちの?
そう。そいつが誘ってくれたんだ。
【母】それじゃあ変な服は着ていけないわねぇ。
だろ?だから探してたんだけど…。
【母】分かったわ。今度の休みにでも服を買っていらっしゃい。
え、良いの?お母さん話せる〜。
【母】そのかわりお母さんは用事があるから自分だけで行くのよ。
え〜、私センス無いのになぁ。
(どうしよう、変な服選んじゃったら…。)
(あ、そういえばあいつ結構おしゃれだったっけ…。)
(決めた。あいつに付き合ってもらおう。)
(やったぁ。)
(これで多少はましな服が選べるかな…。)
(日頃水泳教えてるんだから、これぐらい付き合わせたって良いよね。)
【みんくん】の・ぞ・み!
あ、何?
【みんくん】見てたわよ〜。今の小波くんでしょ?デート?
ち、違うよ。そう言うのじゃ無いって。
【みんくん】一緒に買い物なんて、デートじゃなくてなんなの?
あ、だってあいつ、結構センスいいし…。
【みんくん】ほうほう、君は友人である私のセンスより彼の方が信用できるわけだ。
あっ…。
(そういえば私、他の誰かに付き合ってもらうこと全然考えてなかった…。)
(なんでだろう?)
【みんくん】まぁ、他の子には黙っててあげるから。帰りになんかおごりなさいよ?
……。
(誰かに付き合ってもらう事考えたときに真っ先にあいつが浮かんで…。)
【みんくん】望?
……。え、何?
【みんくん】何ぼーっとしてんの。さ、部活にいこ。
う、うん…。
やっぱりおしゃれな服を探さないとね…。
な、なぁ。私に似合いそうな服なんて…。
(無いんじゃないの?)
お、これなんてどうかな。スーツっぽいけど下はミニスカートだし。
こ、これ!?
良いと思うけどなぁ。チェック柄もきまってるし。
可愛いけど、私には似合わないな。
ん?何言ってるの。清川さん、可愛いから似合うよ。
(どきっ!)
(ま、またそんなこと言って…。)
(こいつ口だけはうまいんだから…。)
お世辞をありがとう。でも、嬉しいよ。
お世辞なんか言う趣味は無いけどなぁ。
分かった、分かった。でも、この服はねぇ。
じゃぁ、試着してみれば。
えぇ、試着って、ここで?
ここじゃなくて、あ・そ・こ。ほら、試着室あるよ。
あぁ。うっ、うん。そうだねぇ。し、試着してみるかなぁ。
(まいったなぁ。こんな事になるなら大人しく買えばよかった。)
(あいつがそばにいるのに着替えなんて…。)
(でも、べつに目の前で着替えるわけじゃないしな。)
じゃあ、着てみるから。…覗くなよ。
覗かないって。信用無いなぁ。
シャァ。
(ふぅ、どうしよう。やっぱり恥ずかしいな。)
(でも、ここまできて着替えないわけにもいかないし。)
(着替えたふりして、これにするよっていっちゃおうか。)
(でも、あいつは似合うっていってくれてるし。)
(私が着てみても似合うって言ってくれるかな…。)
清川さん、どお?
あ、ば、馬鹿。まだ着替え中。
そう。ごめん。
(ええい。仕方ない。)
ばさばさ。
(なんか、恥ずかしいな。このカーテン、大丈夫だよね。)
(服着替えるだけなのに、こんなに恥ずかしいとは思わなかったな。)
(部活で着替えるときは平気なのにな。)
清川さん、終わった?
う、うん。どうかな?
シャァ。
あれ、どうしたの。顔、赤いよ。
え、あ、そぉ?
こ、この服ね。やっぱり可愛すぎて恥ずかしいかな、なんて。
そんなことないよ。清川さんによく似合ってるよ。
そ、そう。ありがとう。これに決めるよ。
うー、やめやめ。こんな事考えるのは。
寝ようっと。明日も早いぞ。