NO.4 2001年 3月27日

一言のコトバ

草

 

 
“イタイ”満員電車の中で足を踏まれる。

するとすかさず“スミマセン”の声。

この一言で痛さは消えてしまうから不思議である。

もしこれが、そっぽを向いていられると、いつまでも痛みが続く。

歩道で、後ろから来る自転車からベルを鳴らされ道を譲るのは、

イマイマしいものだ。

しかしすれ違い様に“アリガトウゴザイマシタ”と言われると、

“イイエ、ドウイタシマシテ”と、いい気持ちになるからおもしろい。

 

中学生らしい女の子が用に来た。

“着ている服、あなたによく似合うねぇ”と言ったらツーンとすましていた顔が

ほころんだ。

 

声をかけた者も、かけられた者も心が晴れる。

人を生かすも殺すも、たった一言のコトバである。

 

 

小学校4年生のB君がいなくなり、夜になっても帰ってこないので大騒ぎになった。

学年最後の3月24日のことである。

たまたま家にいた父親が、Bの成績表を見て

「なんだ、こんな悪い成績でどうするんだ!勉強しているのか」と頭ごなしに

怒りだした。

そばにいた母親が、追い打ちをかけるように

「そーれごらん。言わんことではないでしょう。ゲームばかりしているから

 こんなことになるんじゃないの・・・・」とまくし立てる。

それを全部聞かないうちに、Bはプイといなくなってしまったのである。 

夜遅くなって、遠くの警察からBを保護しているという連絡が入った。

どうしてこんな遠くまで来たのかとお巡りさんに聞かれ、

Bは「おばあちゃんの所へ行きたい」と答えたという。

 

3年生の終わりの時に、そのおばあちゃんが家へ来ていた。

お母さんが「Bは成績が悪くて困る」とこぼしたら、おばあちゃんが

「Bだって一生懸命やったんだから、よくやったねと言っておやり」と

お母さんをたしなめた。

 

 Bはそのおばあちゃんのところへ行きたかったのだ。

 

柵

 

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