冷たい手にハァーハァーと息をかけると、手は温かくなり、 熱い湯はフーフーと息を吹くと冷めて飲みやすくなる。 同じ口から出る息である。 出会う度に家族のことや近隣・職場の出来事を話してくれる人が何人かいる。 Aさんは、「孫がねぇ、こんなこと言ってくれて本当に嬉しかったねぇ」とか 「おばあさんがこんなことしてくれて嬉しかったよ」とか、喜び多い話に感心する。 Tさんは、「子にこんなこと言われて腹が立った」とか 「嫁のくせにこんなことを言った」とか、不平不満の多いのに驚く。 Aさんに対して相づちを打ち易いが、Tさんの場合は、どう対応してよいか迷う。 Aさんの家庭もTさんの家庭も、そんなに差があるわけではない。 ごく普通の家庭で、孫も子も嫁も、どちらが良いとか悪いとか比較できないのである。 この二つの家庭が、今はどうであれ5年先、10年先にはどう変わってくるだろう。 さて、マスコミが報じているようにずいぶんモノは豊かになったが 心も豊かになっただろうか。 ともすると心はなおざりにされ、貧しくなっているような気がする。 特に言葉(口)は貧しくなったと思う。 他人の悪口はウソでも面白がり、他人をほめる言葉、相手を楽しくさせる話は なかなか出てこない。 日々使っている言葉は、今は口ほど心に思っていなくとも それが積み重なれば口(言葉)に心がついてくるようになるに違いない。 喜びや楽しい話を多く持つようになると、ずいぶん心は安らぎ豊かな心になれるし、 相手にも良い影響を及ぼすことは間違いない。 同じ口から出る息(言葉)に、これほどの違いがあることを 自覚しなければならないと思う。 思いやりの温かいハァーハァーの息が、社会を明るくするのではないだろうか。 |