市民からの投書
あまりにも回答がわかりにくいので、市民の方が「こういうことを言いたいのだろう」
と約してくださいました。
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大変偉い方が回答を寄せられましたので、それらしい口調に直してみました。
>
やはり雰囲気が変わると少し判りやすいかも知れません。
>
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> T.吹田市の天然記念物に指定
> 1)吹田市環境基本条例第20、21集及び吹田市文化財保護条例第38条に基づき、
>
高町池周辺の千里緑地のヒメボタルの群生を吹田市の天然記念物に指定すること。
>
>
ちなみに、岡山県は昭和34年3月、岡山県阿哲郡哲多町のヒメボタルを県指定天
>
患記念物に、愛媛県上浮穴郡面河村は平成10年8月、面河村のヒメボタルの群生を
>
村指定天然記念物に指定しています。
>
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> 1.回答の吹き替え(博士版)
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> A.天然記念物の性格
> (1)諸君の捉え方は間違っておる。
>
うむ。たしかに君たちの言うとおり、文化財保護法では、史跡や名勝とともに
>
記念物という範疇で天然記念物を文化財のひとつに規定してはいる.
>
この「天然記念物」という用語は、ややもすると絶滅のおそれのある希少な動
>
植物やすぐれた自然などとしてイメージされ、自然そのものを保護する制度であ
>
るかのように受けとめられる傾向があることは否定できぬ。
>
しかし、法が目的とする天然記念物とその保護制度は、自然環境の構成要因と
>
しての貴重な動植物の保護を目的とする「自然保護制度」とは違うんじゃ。
> (2)いいかね。文化財というのは地域の歴史や文化と一体になったものでなければ
> いけないんだよ。
>
君たちも知っておると思うが、人は長い歴史を通じて地域によって多様な歴史
>
と文化を生み育んできたんじゃが、なかでも日々暮らす地域の自然と深くかかわ
>
った生業や生活の様式は、地域によって一様でない風土や文化をもたらたわけじ
> ゃ。
>
天然記念物とは、こうした様々な人と自然のかかわりを反映したものをいうの
> だ。
>
(たとえば、それらは信仰や故事に由来する巨樹・老樹の単木であったり、神の
>
宿る森や山であったり、和歌などに詠まれた景勝の花や紅葉などの植物であった
>
り、神に見立てられた鳥や魚であったりするのだ。)
>
>
諸君にわかるようにかみ砕いて言うと、「文化財保護法が対象とする天然記念
>
物は、自然物が地域において歴史や文化と一体的にとらえられ親しまれてきた文
>
化財」ということであり、したがって、その保護しようとする自然は、「こうし
>
た地域の風土や文化の形成にかかわり、人が育み守り伝えてきた文化的所産とし
>
ての自然で、かつ学術的価値を有するもの」とされるのだよ。
>
> B.文化財保護条例適用の問題点
>
吹田市文化財保護条例は、文化財保護法第98条第2項の規定に基づき制定された
>
ものだから、市の天然記念物を指定するとなれば、法の考え方に沿って指定を行う
> ことになる。
>
市文化財保護条例の規定によってヒメボタルの指定を考える場合、このヒメボタ
>
ルが地域の歴史や文化形成にどのように関わり、守り伝えられてきた文化的所産な
>
のかということが重要で、これが学術的にみてどのような価値を有するのかという
>
点を精査しなければならない。
>
(ところが、ヒメボタルなんかこれっぽっちも文化的所産でもなければ学術的価値
>
もありはせん。)
>
> C.指定できない理由としては
> (1)生物種の保存はそんなに簡単じゃないぞ
>
おまけに、実効性の問題があるではないか。
>
仮に天然記念物に指定をしたとしても、指定の対象となった動植物が衰亡する
>
ようなことになれば指定を解除することになる。だから、指定の解除とならない
>
ようちゃんと保存しないといかん。人が創造したものなら、まあ博物館に放り込
>
んだりで比較的簡単に保存できるが、自然が創造したものでは簡単じゃない。
>
だいたい、文化財保護法での文化財保存は、指定をして現状を凍結或いは固定
>
を行うということが中心なんじゃ。これは人が創ったものにはいいが、自然が創
>
造したもの、すなわち生物の種の保存を図るという目的を達成するには大した効
>
果無しだ。
>
知っていると思うが、自然動物の保存管理で大事なことは、すべての動物種は
>
自然の中で、個体群をつくるではないか。おまけに一種だけで存在することはな
>
く、いろんな生物種(競争種・捕食種・餌となる種等々)と一緒になって群集を
>
形成している。動植物の保護は、そこにおるこれらの生物を抜きにしては考える
>
ことはできないのじゃよ。
> (2)もっと考えないと駄目じゃ
>
結論を言うと、こうしたものの生息地も含む生態系全てを保存する必要がある
>
んだから、日々変化する自然動植物の場合は、以上のことをわかったうえで、生
>
物学や自然環境保護の観点からちゃんと施策を講じないと、名前だけ天然記念物
>
になっても意味がないということなのじゃ。
> (3)それに市民生活を制約する
>
それに、指定が君たち市民の生活を制約する問題もあるぞ。
>
文化財保護条例で指定した場合、天然記念物の保護のために、現状を変更す
>
ることや、保存に影響を及ぼす行為が制限される。うっかりすれば悪意であろ
>
うと善意であろうと罰則が適用されるという厳しい規定を置いて保存という目的
>
を達するようにしているんじゃ。
>
ヒメボタルを指定しようとするなら、その生息する生態系を的確に把握し、保
>
護すべき範囲を特定しなければならない。そして衰亡を防ぐために生態系を壊さ
>
ない程度に手を加えたり、保護増殖のための施策(たとえば光を厭うホタルに対
>
し繁殖期に燈火を制限するとか、繁殖期に立ち入りを禁止するなど)の地域住民
>
(あんたらも含めて)の理解がないとできない施策が伴うんだよ。(それでもい
>
いんかね?)
>
> D.本市の方針
>
だから、わしらとしては、ヒメボタルの保護は、単に条例に基づいて指定すると
>
いうことではなく、生息しているという現在の状態を、市民と協力しあって、保存
>
し、増殖をはかっていくことが重要であると考えておる。指定なんぞするよりも、
>
生物種の保存・増殖、自然環境保護といった観点から保存を行うほうがずっと実効
>
性があると思うんじゃがねえ。
> (1)ヒメボタルの大切さはわかる
>
まあ、ヒメボタルとそれが生息する環境が、本市に残された希少な生物であり、
>
貴重な自然環境であるということは、わからん訳ではない。これを行政と地域の
>
諸君らと協力して後世に引き渡すことが、重要なくらいは判っとる。じゃから、
>
>
文化財保護の観点から、文化財としての評価、生息状況や生態系の把握、衰
>
亡を防ぐための適正な施策のとともに、すでにあれこれと聞いておる諸君の意見
はもちろんじゃが、
他に、生物の保存・増殖を行っている事例や学術研究機関等の調査例の収集を行
い、ヒメボタルの保護にとって最も実効ある方法を研究をしていこうかと考えて
おる。
そんな訳なので、今日のところは理解して帰ってくれたまえ。
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