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コンセプト この地は市内北部の丘陵地にくらべ、極端に緑地が少ない旧市街地にある。地球温暖化の危機や少子高齢化社会などが進んでいる現在、一定規模の土地の再利用を考えられるまたとない機会と捉える。 世界に冠たる環境先進都市を目指し、自然再生推進法第二条(※文末)に基づき、地域の多様な主体が参加した土地の取得および"森の創生"を提案する。 しかし、この地は基本的には現在の社会状況を考え、安全で安心な場でありたい。特に災害時には市民の命を守る場となり、平常時には市民の健康を創造する場でありたい。 [整備の基本方針] 21世紀に入り、高度成長は過ぎ去り、少子・高齢社会に直面し、社会のニーズは量から質、ゆとり・豊かさへと変化している。また地球規模の問題として、温暖化やヒートアイランド現象により、人類の生活を含めた生態系の危機が叫ばれている。 これからは自然再生推進法に謳われているように、過去に損なわれた生態系やその他の自然環境を取り戻すことに知恵を働かせるべきであると考える。 この提案の実現性に関しては、私たちが接する人々は一様に森にしたいと反応していること、また、過去に吹田青年会議所がこの地を森にする案を持っていたと聞き及ぶことを考えると多くの市民の賛同を得ることができると信ずる。 費用では、後述するように吹田市がおこなう基盤整備で公園スペースを拡大することで東西連絡道路幅を縮小でき、必要経費の大きな削減が図れると考えるられ、トラストに加えて行政からの基金とすることができよう。 *景観と環境整備のシンボルとしての森 |
*みどりのネットワーク形成(回廊) 大都市圏の中でも最も緑地が少ない大阪圏域において、計画地は大阪府広域緑地計画の「中央環状緑地群」の軸線上に位置している。 大阪都市圏内の大規模な公園緑地と淀川以北の北摂山系・千里丘陵地帯を連携する絶好の位置にあり、巾は狭いが3kmの森の創生は緑地群形成に大きく寄与しうるものと考える。緑地群形成により、小動物・鳥・昆虫等の多様な生態域が確保され、これら動植物との身近なふれあいにより、人と自然との共生をより一層自覚し、子どもたちの心の成長に欠くことのできないものとなりうるものと考える。 さらに、ネットワークと相互し、都市内緑地としての機能を有し、ヒートアイランド緩和の効果を持つ。 |
*健康づくりの拠点となる森の創生 経済成長に伴い三次産業への就労・交通機関の発達のよる運動不足と豊食・過食による疾病増加、また世界に誇る長寿化が新たなる社会問題となってきている。 老若男女共々、疾病・介護予防を含め健康への関心は一層高まることは誰もが認めるところである。健康な日常生活は本人・家族・社会にとっても望むべき姿である。 吹田市「環境基本計画」の一目標に"人の健康保護及び生活環境の保全"が謳われている。"健康の保護"から一歩前進した"健康づくり"の拠点としての"森"を目指すものである。 |
[施設計画] 全体の配置計画及び個々のイメージは、別図に示す如くである。 この計画は20世紀生まれ育った私たち市民が現時点で考えたものである。 本来今後50〜100年にわたってこの森を利用する人々が自ら工夫し創りあげるべきものであると考えていることを申し添えておく。 |
* せせらぎがある森 北側に常緑の高木を、南側には落葉の中低木を配し、燦燦と陽が差し込む森、陽が差し込むことにより、地表の植生繁殖を促す。 中間部には、蛇行する巾2m深さ1m程度のせせらぎ、かつてどこにでもあった小魚が棲む小川を模した水路を再現する。護岸は水辺の植生が自生可能な状態とし、昆虫などの棲息を促す。 水深は子供の安全を考慮し、常時10cm程度を確保し(6m3/min)、所々に水のたまり(小ワンド)を作り、水中・水辺の動植物の保全を図る。 このせせらぎのある森により、鳥・昆虫・水棲動植物等が多様な生態系を構築し、市民にとって環境意識醸成の場となる。 水源は安威川流域下水処理場の処理水を再利用することが望ましいが1.5km余の配管、揚呈約7mが必要である。または近くの山田川より取水することも考慮に入れる。 |
* 季節を感じうる森 森の中を歩き・遊び・観察することで、季節による日差しの違い・肌で感じる風の違い・木の葉の色の変化・見かける種々の昆虫・虫の音色などを五感で感じとることにより、自然の営みへの理解を深め、共生の意識を育む効果を期待できると考える。 植樹する樹種については、上述の趣旨から季節的な変化がある落葉樹種を主体と しつつ昔この地にあったであろう植生をめざした森とする。すなわち初春の若芽・新緑・花、盛夏には木陰、秋には紅葉、落ち葉を踏みしめて歩ける森を目指す。 |
* 遊歩道・ジョギングコースの設置 地域住民が散策・ジョギングを楽しむ健康づくりの施設として、同時に快適でゆとりのひとときを過ごしうる、身体・精神両面からの健康づくりのコースを設置する。 コースは、二人が並んで歩ける歩行巾1.5m、車椅子通行巾1.0mに余裕を加えた巾3.0m以上の遊歩道をせせらぎと並走させ、所々でせせらぎと交差をさせて設置する。 舗材は、自然な砂利敷きが望ましいが、車椅子の通行・ジョギングを考慮し、透水性・平坦性を確保でき、自然色で弾力性がある舗装が適切かと考える。 |
* 稲作体験・伝統作物の保存地の設置 操車場以前の当該地は、大阪への野菜などの供給地として水田・畑が広がっていたと記録されている。現在は市街地化しその姿を見ることはきわめて難しい。 現在の児童は、毎日口にする米に関し、稲の生育からの過程を体験・観察する機会がなく、食の大切さを自覚し得ない状況にあり、食育の重要性がいわれている。 吹田の伝統作物に"スイタクワイ"がある。現在この伝統作物は、有志により細々と保存栽培され、絶滅寸前の状況である。そこで今回提案する水と森の一画に、3アール規模の水田と湿田を設け、稲作体験の場・すいたクワイの保存に寄与させる。 |
* 緊急災害時の避難スペースおよび延焼防止効果 ここ複十年の間に必ず起こると予測されている(活断層の直下型地震や南海・東南海沖地震など)震災時の避難空間として、さらに大火時の延焼防止の効果がある。 当旧市街地は、被災時の緊急避難場所としての一定規模を有した広場・空間に乏しい。現在操車場跡地としての空間があるが、機能移転すれば空間ではなくなり、避難空間として期待はできない。そこで提唱する森が緊急時には大きな利用効果を発揮するものと考える。 |
* 森のマネージメント組織の編成 基幹の整備は公共機関に委ねざるを得ないが、冒頭で市民参加型による"森の創生"を提唱した如く、この森を創生・活用するために行政、市民、NPOなどの諸団体、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体の手でつくり、運営する形態が望ましいと考える。 |
* 保育園の設置(下水処理場跡地利用) 吹田・摂津市境(摂津市行政区域)の下水処理場跡地は、鉄道結節点であるJR岸辺駅・阪急電鉄正雀駅への連絡通路に近いところにある。この連絡通路は山田・岸辺両地区から神戸・大阪・京都方面への鉄道利用者の通行が頻繁である。 働く女性は今後増えることはあっても減ることはないと思われ、子育て中の働く母親にとって駅近くの保育所の要望は大きい。働く母親にとって最も必要なのは病児保育所である。安心して子育てしながら、働ける環境整備として病児保育所の設置が急務である。この保育所は屋上緑化、太陽光発電の施設を有するものとする。 |
*東西連絡道路構造 |
当計画地の北側に沿って、片山町・JR岸辺駅及び摂津市JR千里山駅を東西連絡道路が計画されている。現在この計画道の北側にはほぼ平行して府道14号がある。 したがって計画道路は府道の役目の一端を担うことになるが、交通需要として大きくはない。歩行者や自転車は最寄り駅への通勤・買い物および公園(森)利用が主で、道路の両側に歩道を設けても需要はさほど大きくないと予測される。 そこで上図に示す如く、北側に設ける片側歩道とし、南側は公園スペースを少しでも広くすることを提案する。急ぐ人は北側の歩道を利用し、時間をかけて歩く人は公園内の遊歩道を通って目的地へと、多様化に応じた道路構造にすることを提案する。 |
(※) 自然再生推進法(平成十四年十二月十一日法律第百四十八号)第二条 この法律において「自然再生」とは、過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法 (平成十年法律第七号)第二条第二項 に規定する特定非営利活動法人をいう。以下同じ。)、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が参加して、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林その他の自然環境を保全し、再生し、若しくは創出し、又はその状態を維持管理することをいう。 |