「1997.06.07」フォークダンスはうまく踊れない〜紐緒結奈〜

[No.0000000013]柴田

・体育祭、応援席にて

朝日奈 |見て見てゆかり、私の今日の運勢。「素敵な出会いがあるでしょう」
    |ですって、ラッキー。
古式  |ま あ、そ れ は よ か っ た で す ね ぇ。
朝日奈 |ゆかりのも見てあげるね。えーとゆかりは……。
    |げげっ、恋愛運、金運どっちもさいっていだよ。
古式  |そ う で す か。そ れ は 困 り ま し た ね ぇ。
朝日奈 |でもでも、ギャンブル運は最高だよ。よかったね。ゆかり。
古式  |ギ ャ ン ブ ル、で す か?私 は ギ ャ ン ブ ル は ち ょ っ と。
朝日奈 |それもそうだね。
古式  |は い。お と う さ ま に 叱 ら れ て し ま い ま す か ら…。
紐緒  |叱られる前に犯罪よ。
古式  |そ う で し た か?お と う さ ま は ア メ リ カ に い ら し
    |た と き た ま に な さ っ て い る よ う で す が…。
紐緒  |アメリカではともかく日本では犯罪よ。
朝日奈 |紐緒さん、流行に乗り遅れてるよ。今はオートレースが流行ってるん
    |だよ。
紐緒  |お、オートレース?
朝日奈 |SMAPの森君がね。オートレーサーになるんだって。
古式  |ま あ、そ れ は た い へ ん で す ね ぇ。
朝日奈 |そうなのよ。でも今度はオートレースで応援すればいいんだけどさ。
紐緒  |スワップだかスキップだか知らないけど、学生は公営ギャンブルもで
    |きないのよ。
朝日奈 |あら、別に見るだけならかまわないじゃん。私もたまに競馬を見に
    |行くんだ。
古式  |競 馬 で す か?私 も 馬 は 好 き な ん で す が、ど う も あ
    |の 放 送 は 何 を 言 っ て い る の か 聞 き 取 れ ま せ ん の
    |で…。
朝日奈 |へー、ゆかり、競馬なんか見るんだ。
古式  |お と う さ ま が た ま に 見 て い る よ う で す。私 は……。
朝日奈 |見てるんじゃなくてボーっとしてるんでしょ。もう、ゆかりったらそ
    |んなんばっかじゃない。
紐緒  |あなたたち、口を挟んだ私が悪かったけど、そこで騒がれると本が読
    |めないのよ。悪いけどギャンブルの話なら向うでしてくれない?
古式  |そ れ は 失 礼 し ま し た。
朝日奈 |なによぉ。紐緒さんだって応援しなきゃいけないのになんで本なんか
    |読んでるのよぉ。
紐緒  |本なんかって、あなたたちだって読んでるじゃない。
朝日奈 |うっ、そりゃそうかもしれないけど…。
古式  |一 本 取 ら れ て し ま い ま し た ね。
朝日奈 |うううっ……。そうだ!紐緒さんの運勢も見てあげるわね。
紐緒  |遠慮しておくわ。
古式  |紐 緒 さ ん の 誕 生 日 は 確 か…。
好雄  |そういうことなら俺にまかせてくれ。紐緒さんの誕生日は7月7日、
    |血液型は…。
朝日奈 |サンキュー、でも血液型はいらないんだ。
好雄  |じゃ、分からないことがあったらなんでも俺に聞いてくれ。
古式  |早 乙 女 さ ん っ て 博 識 で す ね ぇ。
紐緒  |単に好き者なだけよ。
朝日奈 |7月7日、7月7日、あっ、あった。
紐緒  |だから、遠慮しておくっていってるでしょう。
朝日奈 |紐緒さん、超ラッキーだよ。ね、聞いて聞いて。
紐緒  |遠慮するわ。
朝日奈 |「あなたの今日の恋愛運は最高です。偶然のすばらしい出会いが二人
    |の仲を大きく進展させるでしょう」ですって。
古式  |ま あ、す ば ら し い で す ね。
紐緒  |くだらないわ。
朝日奈 |えー、この本、当るって大評判なんだよ。
紐緒  |こんな非科学的なもの、当るわけないでしょ?
朝日奈 |むっかー、ゆかり、向うに行こう。
古式  |そ れ で は 失 礼 致 し ま す。
    |すたすた
紐緒  |あんなもの信じちゃってばかじゃないの。

・校庭。フォークダンスの輪

紐緒  |(なんで私がダンスなんかに付き合わないといけないのよ。理不尽だわ。)
    |ちゃかちゃんちゃんちゃんちゃかちゃんちゃんちゃん。
紐緒  |(すばらしい出会いなんてなかったし…。)
    |ちゃかちゃんちゃんちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん。
紐緒  |(な、何を考えているのよ。紐緒結奈。あんな非科学的なものがあた
    |るわけないでしょう。)
    |ちゃかちゃんちゃんちゃんちゃかちゃんちゃんちゃん
紐緒  |(そうよ。私は科学という悪魔に魂を売り渡した女。占いなんか気に
    |してはいられないわ)
    |ちゃかちゃんちゃんちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん
紐緒  |(ふう、もうすぐパートナーチェンジね。次は……!駒人君!)
    |ちゃちゃんちゃちゃんちゃんちゃちゃんちゃちゃん
紐緒  |(お、落ち着くのよ。結奈。別にどうってことないじゃない。)
    |ちゃちゃんちゃちゃんちゃんちゃちゃんちゃちゃんちゃん
紐緒  |……。
    |ちゃちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん
紐緒  |(ああっ、ついにパートナーチェンジだわ。)
    |ちゃかちゃんちゃんちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん
小波  |こんにちは、紐緒さん。
紐緒  |……。
小波  |紐緒さんてば…。
紐緒  |……。
小波  |おーい。
紐緒  |……。
小波  |……。
紐緒  |……。
小波  |……。
紐緒  |……。
小波  |ごめんね。でも、もうすぐパートナーチェンジだから…。
紐緒  |……わ。
小波  |え?何て言ったの?
紐緒  |かわる必要はないわ。
小波  |でもそういうわけには…。
紐緒  |いいのよ。
小波  |でもみんなに迷惑が…。
紐緒  |いいのよ。
小波  |でも……あれ?ちょうど曲が終わったみたい。じゃあ、次の曲もお願います。
紐緒  |……。
小波  |いいよね?
紐緒  |別にいいわよ。
小波  |あれ?この曲は……。
紐緒  |どうしたの?
小波  |これはパートナーチェンジのない曲なんだけど…。
紐緒  |……。
小波  |いいんだよね?
紐緒  |……ね。
小波  |え?何て言ったの?
紐緒  |占いもばかにならないわねって言ったのよ。
小波  |紐緒さん?
紐緒  |私らしくないわね。
小波  |そんなことはないけど。
紐緒  |そう?
小波  |やっぱりおかしいかな?
紐緒  |そうよね。やっぱりそうよね。
小波  |紐緒さん?
紐緒  |……。
小波  |紐緒さんてば…。
紐緒  |……。
小波  |おーい。
紐緒  |終わるわね。
小波  |え?
紐緒  |曲が終わるわ。
小波  |ほんとだ…。
放送  |次の曲が最後でーす。
小波  |最後だって。
紐緒  |そうね。
小波  |あの、紐緒さん。この曲は手を握る曲なんだけど…。
紐緒  |それがどうしたの?
小波  |握って良いの?
紐緒  |しかたないじゃない。
小波  |そっ、そうだよね…。
紐緒  |……。
小波  |……。
紐緒  |……。
小波  |……。
紐緒  |……。
小波  |紐緒さん、パートナーチェンジだから…。
紐緒  |仕方ないわね。
好雄  |あれ?次は紐緒さんかぁ。さあ、その手を…。
紐緒  |……ね。
好雄  |え?なんてったの?
紐緒  |当ってばかりじゃないわねって言ったのよ。
    |気分が悪くなってきたから私は帰るわ。
好雄  |おーい。それはないよぉ。
    |すたすた
好雄  |うううっ、シャドーフォークダンスなんてむなしいぜ。
小波  |(紐緒さん、どうしたんだろう。)