「1997.02.15」バレンタインデーの翌日に〜紐緒結奈〜

[No.0000000013]柴田

・廊下にて

紐緒  |駒人君。
小波  |どわぁぁ。紐緒さん!
紐緒  |……。
小波  |ごっ、ごめんなさい。
紐緒  |……。
小波  |いや、紐緒さんに声をかけられて余りにうれしかったからつい…。
紐緒  |……。
小波  |もう心臓もどきどきしちゃって…。
紐緒  |心臓が?
小波  |そう、もう破裂寸前。
紐緒  |私に診せなさい。
小波  |えっ、ちょっと待って…。
    |ぴたっ。
紐緒  |本当ね。すごい脈拍数だわ。それに手のひら全体に伝わるこの圧力…。
小波  |いや、別に対したことは…。
紐緒  |大丈夫、病気なんじゃない?
小波  |そんなことはないと……、あっ、そうだ。俺も紐緒さんの心臓、調
    |べてあげるよ。
紐緒  |え?ええぇー!?
小波  |さぁ、その手をどけて…。
好雄  |なんてことをするんだ!この命知らずのスカターン!!!!!
    |ぐわしゃっ
小波  |いってぇー。なんだよ好雄、たんなるおちゃめな冗談じゃないか。
好雄  |おまえ、相手を見て冗談を言えよ。ほら紐緒さんを見るんだ、怒り
    |の余り……あれ?
小波  |ほんとだ。真っ赤だ!
紐緒  |あ、赤くなんかなっていないわよ。
小波  |ほら、好雄。怒ってないって…。よかったな。
好雄  |お、おまえ、状況を見てしゃべれよな。
小波  |そうだった。紐緒さん。殺さないでぇぇぇ。;_; ;_;
紐緒  |……。
好雄  |……俺はおまえのことを今の今まで長生きする奴だと思っていたけ
    |ど、実は明日にでも殺されても仕方がないような奴だったんだな。
紐緒  |なんなら、今でも構わないわよ。
小波  |たっ、たんなるおちゃめな冗談だのに…。
好雄  |紐緒さん、遠慮はいらない。今すばっと殺しちゃってくれ。俺が許
    |す。
小波  |好雄ぉ、それはないだろう。
好雄  |小波、俺はおまえの親友だったことをこんなに後悔したことは……
    |いや、これが二度目かな?
小波  |あっ、好雄。待ってくれよぉ。
    |ちぇっ、行きやがった。あいつってあんなに冗談が分からない男だっ
    |たかなぁ。
紐緒  |私は冗談については良く分からないけど、早乙女君の気持なら分か
    |るわ。
小波  |え?どんなふうに?
紐緒  |「小波、おまえには言われたくないぜ」と思っているはずよ。
小波  |^_^;
紐緒  |ところで、駒人君。
小波  |なに?紐緒さん。
紐緒  |ちょっと食べてもらいたいものがあるのよ。
小波  |え?これ?これはひょっとしてチョコレート?
紐緒  |そうよ。
小波  |でも今日って2月15日だよね、。
紐緒  |そうよ。
小波  |バレンタインデーは昨日なんだけど。
紐緒  |そうらしいわね。
小波  |それなのに今日チョコレートなの?
紐緒  |そうよ。
小波  |紐緒さん、ひょっとして昨日学校休んだ?
紐緒  |休まないわよ。
小波  |ひょっとして昨日は俺を見つけられなかった?
紐緒  |別に昨日はあなたを探したりはしなかったわ。
小波  |それなのに今日チョコレート?
紐緒  |そうよ。
小波  |うーむ。
紐緒  |あなた、言いたいことははっきり言いなさい。
小波  |いや、バレンタインのチョコレートなら昨日もらいたかったなぁと…。
紐緒  |どれがバレンタインのチョコレートなのよ?
小波  |え?
紐緒  |これは単なるチョコレートよ。
小波  |えーと…。^_^;
紐緒  |さあ、食べなさい。
小波  |あのー。
紐緒  |食べて出た症状をレポートにまとめるのよ。
小波  |ええ?
紐緒  |さあ、何をしているのよ。早く食べなさい。
小波  |紐緒さん、ひとつだけ聞いていい?
紐緒  |なによ。
小波  |これはバレンタインのチョコじゃないんだよね?
紐緒  |私にはバレンタインなんて関係ないわ。
小波  |紐緒さん、これってひょっとして何かの実験?
紐緒  |あなた、ひとつだけっていったのにもうひとつ質問するの?
小波  |これってひょっとして何かの実験?
紐緒  |「ひとつだけ」
小波  |これって何かの実験?
紐緒  |「ひとつだけ。」
小波  |わかった。もう約束します。食べます。絶対食べます。レポートも
    |書きます。だから教えてください。これって何かの実験?
紐緒  |そうよ。2ヶ月かかった研究が一昨日やっと完成したのよ。
小波  |一昨日?
紐緒  |そう。一昨日。
小波  |だったら昨日くれればいいのに。
紐緒  |え?
小波  |昨日だったらなんの疑いもなくあっさり食べたのに…。
紐緒  |なんの……疑いもなく……?
小波  |さあ、覚悟を決めて食べるとするか。
紐緒  |……。
小波  |あれ?紐緒さん。
紐緒  |なによ。
小波  |なんだか顔が赤いよ。
紐緒  |なんでもないわ。
小波  |どれどれ。
紐緒  |なっ何をするのよ。
    |ぴとっ
小波  |紐緒さん!すごい熱だよ。
紐緒  |なんでもないって言ってるでしょ。
小波  |そんなことはないよ。さあ、保険室に行こ……。
好雄  |このスカポンターン!!!
    |どこっ。
小波  |なっ何をするんだ。
好雄  |今まで遠くから見守っていたがもう許せん。おまえなんかこうして
    |やるぅ。
    |げしげし
小波  |こらっ、止めろ、好雄。踏むんじゃなーい。
    |ああっ、紐緒さんまで!どうして踏むんだよぉ。;_;
    |うわー、通りがかりの女の子までなぜに踏むぅぅぅぅ。;_; ;_;
    |ひぇー、あっちこっちから人が集まってくる。なぜなんだぁぁぁぁぁぁ。