「1996.08.09」ハプニングinサマー(第1話)

[No.0000000001]山本
   |8月9日朝きらめき港
小波 |ついに高校生活2回目の夏休みがやってきた。
   |俺達は「ひと夏の思い出」を作るべく、旅行の計画を立て海に行く事にした。
   |(こんな事を清川さんに知られたら、何と言われる事か…)
   |ここで言う「俺達」とは、当然俺と好雄の事だ。
   |断じてそれ以外の人間を指しているわけではない。
   |だったはずなのだが………。
   |なぁ、好雄。
   |なんでこうなったんだ?
好雄 |いや、だから悪かったと思ってるよ。
小波 |全く、何が「男二人ってのが一番ナンパしやすい、
   |だから二人で行って夏の思い出を作ってこよう」なんだか…。
好雄 |いや、だから悪かったって…。
詩織 |何を作るんですって?
小波 |えっ、いや、その………、はははは、何でもないって。 
詩織 |ふ〜ん、なんだか「二人で行きたかった」って顔してるわよ?
小波|そ、そんな事あるもんか。
   |詩織と二人っきりならともかく…。
詩織 |えっ………。
好雄 |ゴホンッ。
小波 |なんだよ好雄。
好雄 |回りを見ろ、小波。
小波 |えっ?
   |げっ………。
   |(みんなの目線が…)
   |そうなのだ。
   |「男二人のナンパ旅行」のはずが、好雄の軽口のおかげで
   |いつのまにか知れ渡り、ついには………総勢15人の大旅行
   |になってしまったのだ。
   |詩織…、はまぁいいだろう。
   |幼なじみだし、一緒に旅行した事もある。
   |二人っきりでかって?
   |そんなことをする間柄なら、今回みたいな計画に最初から
   |乗ったりしなかっただろう。
   |大体、「幼なじみと一緒に旅行」といえば、「子供の頃」
   |に「親と一緒に」というのが定番であり、俺の場合も
   |その定番から外れたりはしないのだ。
   |清川さん。
   |同じ水泳部だし、よく遊びに行くのだから、一緒にいても
   |おかしくないといえばおかしくないのだが…。
   |練習はどうしたんだ、特別練習は。
   |虹野さん。
   |この子もよく遊ぶのでいても不思議ではない。
   |が、サッカー部はいいのか!?
   |朝日奈奈さん。
   |この子の前で遊ぶ話をしたのが間違いだ。
   |全く好雄の軽口のおかげで…。
   |古式さん。
   |朝日奈奈さんとは全くペースの違うのに、いつも二人一緒にいる。
   |今回も当然のようにセットでくるつもりらしい。
   |館林さん。
   |この子も暇なのか何なのか、一緒に行動してる事が多いように思う。
   |なにやら好雄とよく話してる様だが、好雄に気があるのだろうか?
   |伊集院院。
   |俺達がなにか計画を立てると必ずしゃしゃりでてくる。
   |そんなに仲間に混ざりたいなら正直に言えばいいものを…。
   |優美ちゃん。
   |好雄の妹だし、まぁ来たいと言うのを無碍に断るのも…。
   |だから、妹に「ナンパ旅行」の話しをするのはよせ、好雄。
   |片桐さん。
   |清川さんの親友。
   |はともかく、なんでこの子がここに…。
   |美樹原さん。
   |詩織の親友。
   |だからなんでいるんだってば。
   |如月さん。
   |知り合いではある。
   |が、こういう旅行にくるような子じゃ無いはずなんだが…。
   |夏の海に如月さん…、似合わなさすぎる………。
   |鏡さん。
   |分からない。
   |なぜこの人がここにいるのかさっぱり分からない。
   |どうもこの人の場合、イマイチ考えてることが読めないんだ。
   |常に親衛隊に囲まれてる人が一人で立っていると、変な気はする。
   |紐緒さん。
   |この人が一番分からない。
   |なんか俺のことを実験動物か何かと勘違いしてるようだから、
   |今回もその辺りが目的で…?
   |ぶるるるっ、考えるのはよそう。
   |ぜ〜ぜ〜、疲れた。
   |なんで紹介するだけで疲れるほどの人数がついてくるんだ…。
   |冗談じゃないぞ、まったく。
清川 |誰と二人っきりがよかったって?
小波 |えっ、いや〜、あの…。
美樹原|小波さん、不潔です。
小波 |あの、美樹原さん?
朝日奈|も〜、小波君ってHなんだから。
古式 |仲 が よ ろ し い よ う で、け っ こ う な 事 で す ね。
小波 |あの〜、だから…。
如月 |お二人はそういう仲なのですか?
小波 |いや、そういう訳じゃ…。
虹野 |そ、そうだよね。そんなんじゃ無いよね。
小波 |そ、そうなんだけど…。
詩織 |………。
小波 |(あぁ、詩織の目が恐いぞ!)
優美 |先輩、優美はどうですか?
小波 |ど、どうですかって言われても…。
好雄 |小波、優美に手を出すと…。
小波 |出さないよ!
優美 |優美じゃダメなんですね…。
小波 |あ、いや、そういう意味では…。
館林 |小波君ってもてるんだね。
小波 |(これはもててるのか!?)
片桐 |イッツソーグッボーイ。
   |かっこいいからもてるのも当然よね。
小波 |そ、そうかなぁ。
魅羅 |まぁ、小波君にはこの程度の女の子で十分かもね。
小波 |こ、この程度!?
   |俺のことはともかく、そういう言い方は無いんじゃないか!?
紐緒 |そうよ、小波君は最高の実験材料だわ。
小波 |ひ、紐緒さん、それはちょっと…。
伊集院|さぁ、出港の準備が整ったぞ。
   |みんな、乗ってくれたまえ。
小波 |さ、さぁ、みんな。
   |準備できたみたいだから、船に乗ろう。
   |(助かった…かな?)
   |8月9日昼船上
伊集院|どうだね、この伊集院院家が誇る「エリザベート2世号」
   |の乗り心地は。
小波 |さすが金持ちは違うよ、悔しいがフェリーなんかとは
   |天地の差だ。
伊集院|そうだろうそうだろう。
   |このぼくが一緒に来て上げたことを感謝したまえ。
   |はぁ〜っはっはっはっはっは。
小波 |(これが無ければそれなりに良い奴なんだがなぁ)
伊集院|なにか言ったかね?
小波 |いや、別に。
   |所で、この船どこに向かってるんだ?
   |きらめきビーチじゃ無いみたいだけど。
伊集院|はぁ〜っはっはっはっは。
   |ぼくがそんな庶民が泳ぐような所に行くはずが無いだろう。
小波 |お、おいおい。
   |じゃあいったいどこに…?
伊集院|ぼく個人が所有している無人島のプライベートビーチだ。
小波 |む、無人島〜!?
伊集院|そうとも。
   |君達には本当の「海」というものを見せて上げよう。
小波|ほ、本当の海はいいけど、それってどこに有るんだよ。
伊集院|な〜に、ここから船で2日程の所だ。
小波 |お、おまえなぁ。
   |俺達は日帰りのつもりで来てるんだぞ?
   |んなとこつれて行ってどうするんだよ!?
伊集院|心配はいらん。
   |この船には宿泊設備を含め、優に1月は暮らせるだけの
   |施設が整っている。
小波 |それなら…、ってそうじゃなくて予定とかもあるだろ?
伊集院|都合の悪い者はヘリで帰らせる事も可能だ。
   |が…。
小波 |が?
伊集院|さっき聞いたところでは、だれも問題は無いらしいが?
小波 |本当か〜?
伊集院|ぼくの言う事を疑うのかね?
小波 |まぁ、信用しておこう。
伊集院|当然だ。
   |まぁ、そうと分かったところで、客室でくつろいでくれたまえ。
   |これがきみの部屋の鍵だ。
小波 |ありがとう。
   |そうさせてもらうよ。
伊集院|ちなみに船内と甲板にそれぞれ1つずつプールがある。
   |自由に使ってくれたまえ。
小波 |(おいおい、どんな船なんだよこれは…)
   |8月9日夜船内
好雄 |よう小波、元気か?
小波 |なんだ、好雄か…。
好雄 |なんだなんだ、元気無いな。
小波 |突然の展開について行けてないだけだ。
好雄 |なんだそりゃ?
   |まぁいいか。
   |それはそうと、風呂に入らないか?
小波 |風呂?
   |風呂なら各部屋に一つずつ付いてるじゃないか。
   |まったくなんて船だよこれは…。
好雄 |ちっちっち…。
   |ただ風呂に入ったっておもしろくないだろ?
小波 |おもしろい風呂があるのか?
好雄 |何でも各部屋の風呂のほかに、大浴場があるらしいんだ。
小波 |だいよくじょう〜?
好雄 |あぁ、そうだ。
小波 |それのどこが「おもしろい」んだ?
好雄 |まぁ最後まで聞け。
   |その風呂ってのは元々1つだったのを急きょ男女に仕切った
   |んだそうだ。
小波 |なんでまたそんな事を?
好雄 |そりゃ、元々この船は「伊集院院専用」な訳だから…。
小波 |大浴場ってのは伊集院院のためだけのものだったって事か。
好雄 |たぶんな。
小波 |ってことは「あの」伊集院院が俺達のために大浴場を開放した
   |ってことか?
好雄 |そうなるな。
小波 |なんか、恐くないか?
好雄 |ちょっとな…。
   |まぁ、伊集院院の事だから女の子に良い格好したかっただけだろ。
小波 |(それなら大浴場をそのまま女の子に開放すればいいような気がする)
   |(なんか企んでるのか…?)
好雄 |それでな、急きょ仕切っただけだから、あちこちに隙間があるらしいんだよ。
小波 |で、まさかそこから覗こうって言うんじゃないだろうな?
好雄 |当たり前じゃないか。
   |男としてこのチャンスを逃していいと思うか?
小波 |だからといって…。
好雄 |なぁ、小波。
小波 |なんだよ?
好雄 |正直になろうぜ?
   |おまえ、見たくないのか?
小波 |うっ…、そう言われると…。
好雄 |見たいだろ?
小波 |そりゃ、男だからな…。
好雄 |よし、決まった。
   |じゃあ早速行こうぜ。
小波 |えらく急だな。
好雄 |いや、さっき女の子達が今から風呂に行くって言ってるのを
   |聞いたからさ。
   |丁度今ごろみんな風呂に入ってるはずなんだ。
   |さぁ、急いだ急いだ。
小波 |わ、分かったよ。
   |(妙にはりきってるなぁ)
   |(気持ちは分かるが…)
   |8月9日夜大浴場(男風呂)
小波 |うわ〜、これで半分なのか?
好雄 |いや、たぶん女子風呂の方が広いと思うから半分以下だな。
小波 |そこらへんの銭湯なんか目じゃないな。
好雄 |ま、仮にも伊集院院専用だからな。
   |そんな事よりっと…。
小波 |おい、好雄、体も洗わずにどこに…。
好雄 |そんなもんは後だ。
   |まずは良い場所を捜さないとな。
小波 |(まったく…)
好雄 |おぉ、これは!!
小波 |見、見えるのか!?
好雄 |湯気で全く見えない…。
小波 |がくっ。
   |何なんだよそれは。
好雄 |でも声が聞こえるぞ!
小波 |えっ?
   |本当だ………。
   |8月9日夜大浴場(女風呂)
虹野 |藤崎さんってスタイルいいのね。
詩織 |そ、そうかしら。
虹野 |うん、肌も白いし…。
   |私なんてずっと外にいるから日に焼けちゃってほら。
詩織 |でも健康的で良いと思うけど。
虹野 |ううん、これじゃダメよ。
詩織 |
虹野 |やっぱりもっと努力しなくちゃね。
詩織 |なにを?
虹野 |あ、ううん、こっちの事だから。
   |でもこうしてみると、肌のきれいな人多いなぁ。
詩織 |そうね。
   |メグなんてすごいわよ。
美樹原|えっ?
   |詩織ちゃん、呼んだ?
詩織 |メグの肌はきれいだって言ったの。
美樹 |やだ、そんな、恥ずかしい…。
詩織 |ホントきれいよねぇ。
美樹原|で、でも色が白いのは如月さんの方が…。
如月 |はい?
   |呼びましたか?
虹野 |美樹原さんが、如月さんの肌って白いねって。
如月 |そ、そんな…。
   |私のはあまり日に当たれないせいですから。
虹野 |そうなんだ。
   |でもその分ホントに白くてきれい…。
如月 |そ、そんな…。
   |じっと見られると恥ずかしいです…。
優美 |先輩達みんなきれいだなぁ。
   |優美もあんな風になれるのかなぁ。
詩織 |優美ちゃんだってあと1年すればもっときれいになるわよ。
優美 |ホントですかぁ?
詩織 |そのかわり、きれいになる努力はしなくちゃね。
優美 |はい、優美がんばります。
片桐 |みんな何を盛り上がってるのかしら?
清川 |誰の肌が白いかだってさ。
   |そういえば彩子の肌は結構焼けてるね。
片桐 |オフコース、当然よ。
   |こう見えても外にいる時間は長いんだから。
清川 |そっか。
   |写生とかで結構外にでてるもんね。
片桐 |望こそ、水泳部の割に焼けてないわね?
清川 |私は室内プールで個人練習がおおいから。
片桐 |そっか。
清川 |でも変だね。
片桐 |ホワット?何が?
清川 |美術部の彩子が焼けてて、水泳部の私が焼けてないなんて。
片桐 |それもそうね。
   |でもさすがに水泳部だけあって、望はスタイルがいいわよねぇ。
清川 |な、なんだよ急に。
   |恥ずかしいなぁ。
片桐 |足首もしまってるし。
   |ん〜、スレンダーガール。
清川 |それ、ほめてるの?
片桐 |もちろん。
清川 |ま、いっか。
   |でもスタイルなら鏡さんのほうがすごいと思うけどなぁ。
魅羅 |あら、呼んだかしら?
清川 |わっ!?
魅羅 |人を見て驚くなんて失礼よ?
清川 |ご、ごめんなさい。
   |そこにいると思わなかったから。
魅羅 |まぁいいわ。
   |で、なにか用なの?
片桐 |ビューティフルスタイル、魅羅のスタイルがすばらしいって話してたの。
魅羅 |ほ〜っほっほっほ、当然よ。
   |この私にかなう人などいないわ。
清川 |この自信はどっからくるんだろう…。
魅羅 |なにかおっしゃった?
清川 |いや、なにも。
魅羅 |そう…。
   |まぁ、あなた方もそれなりに元はいいんだから、努力すれば私の足元くらい
   |まではなれると思うわよ。
   |ほ〜っほっほっほっほっほ。
   |では失礼。
朝日奈|みんな見る目がないなぁ。
   |なんで私たちが話題に上らないの?
古式 |そ う で す ね ぇ。
朝日奈|ねぇ、ゆかり。
   |あんた分かって言ってる?
古式 |ス タ イ ル の 話 し で は 無 い の で す か?
朝日奈|いや、そうなんだけどさ。
   |ゆかりが自分のスタイルに自信持ってるとは思わなかったから。
古式 |そ う で す か?
朝日奈|そりゃ、スタイルいいのは認めるし、色も白くていいセンいってるとは
   |思うけど、それを口に出して言うとは思わなかったもん。
古式 |そ う で す ね ぇ。
朝日奈|………いつもの事ながら、話しが通じてるやら通じてないやら…。
館林 |みんなきれいでいいなぁ…。
紐緒 |あら、あなたきれいになりたいの?
館林 |あ、紐緒さん…。
   |そうですね、みんなみたいにはなれないだろうけど、
   |もうちょっときれいになりたいな。
紐緒 |そんなことは簡単よ。
館林 |えっ?
紐緒 |私に任せれば、1週間でこの中の誰よりも美しくしてみせるわ。
館林 |あ、あの…、それっていうのは…。
紐緒 |どう、私に全てを任せてみない?
館林 |あの、その、また今度にします〜。
   |ぴゅ〜
紐緒 |……残念だわ。
   |せっかく新しく作った薬を試すチャンスだったのに。
優美 |でも先輩の胸ってきれいですよね。
詩織 |あ、ゆ、優美ちゃん。
   |触らないで。
優美 |すっごい柔らかいし…。
詩織 |ゆ、優美ちゃん、くすぐったいってば…。
優美 |いいなぁ。こんな胸になりたいなぁ…。
詩織 |優美ちゃん、いや…。
   |8月9日夜大浴場(男風呂)
好雄 |うをををををを、優美の奴、自分だけ良い目を見やがって!
小波 |お、おい好雄、落ちつけ。
好雄 |これが落ちついていられるか〜!
   |もう我慢できん、俺は壁を上るぞ!!
小波 |お、おい、好雄!
   |よせ、危ないぞ!!
好雄 |うるさい!
   |女体の神秘が俺を呼んでるんだ、じゃまするな!!!
小波 |おい、好雄待てってば!
   |わしわし…
好雄 |あ、小波!
   |おまえ、俺より先に女体の神秘を拝むつもりだな!?
小波 |馬鹿!
   |おまえを止めに来ただけだ。
   |危ないからさっさと降りるんだ。
好雄 |うるさい、だまされないぞ!
   |うぉぉぉぉ、負けるもんか〜!!
小波 |お、おい、好雄!!
   |わしわしわし…
好雄 |おぉ、頂上だ!
   |むっ、ここでも湯気が…。
   |くそ〜、もうちょっとで見えるのに〜。
小波 |好雄、危ない。
   |身を乗り出すな!
好雄 |もうちょっと………。
   |うわっ!!
小波 |危ない!!
   |つるっ!
   |ばっしゃーん!!
好雄 |いっててて。
   |おい、小波、大丈夫か?
   |小波?
   |8月9日夜大浴場(女風呂)
小波 |いってぇ。
   |好雄、だから危ないって言った………、えっ?
詩織 |きっ………。
小波 |し、詩織?
詩織 |きゃー!!!!!!!
小波 |えっ?えっ?えっ?
   |きゃー!!
   |いやー!!
   |すけべ!
   |変態!!
   |ちかーん!!
小波 |結局俺はこのあと一晩中廊下で反省させられる事になった……。
   |湯気でほとんどなにも見えてないっていうのに、なんでこんな仕打ちを…。
   |好雄とは一度ゆっくりと話しをした方がいいかもしれない。