「1996.04.10」せんぱーい!〜早乙女優美〜

[No.0000000056]緑野

・きらめき校門前(朝)

優美  |せんぱーい!
小波  |あっ、君は確か好雄の妹の、エート…。
優美  |ブーッ、優美ですよ。先輩覚えてくださいね。
小波  |ごめん、ごめん。優美ちゃんだったね。うん、ちゃんと覚えたよ。
優美  |もぅ…、忘れちゃいやですよ。
小波  |はい、はい。ところで、好雄は?一緒じゃないの?
優美  |え?お兄ちゃんと一緒に登校なんてしませんよ。
優美  |それに、お兄ちゃん、
    |「俺は女の子の情報収集に忙しいのだ!#
    |とか言って、優美より出かけるの早いんだよ。
小波  |はは、あいつらしいや。
優美  |あ、そうそう、お兄ちゃんといえば…。
小波  |ん?
優美  |これ、お兄ちゃんにお願いできますか?
小波  |これは…、お弁当?
優美  |そう。今日忘れて出かけちゃって。
小波  |ん、わかった。後で渡しておくよ。
優美  |お願いしますね。
    |ところで、先輩…。
小波  |ん?
優美  |……。
    |ううん、やっぱいいや。
    |それじゃ、先輩、またねぇ。
小波  |あっ、優美ちゃん…。行っちゃったよ。
    |何だったんだろう?……ま、いっか。

・教室(朝)

小波  |あっ、いたいた。おーい。好雄。
好雄  |ん?なんだ、小波じゃないか。おはようっ。
小波  |おはようっ、はい、これ。
好雄  |なんだ、これ?弁当箱?
    |ちょっとまて、俺は男に弁当作ってもらう趣味はないぞ。
小波  |何言ってんだよ。
    |優美ちゃんから受け取ったんだよ。お前に渡してくれって。
好雄  |なんだ、そういうことか。
    |俺はてっきり小波はそういう趣味かと思って…。
小波  |おいおい。
好雄  |冗談だよ。でも助かったよ。忘れたの学校来てから気がついてな。
    |金欠だから購買でパン買う金もないし…。
    |でも、優美とよく会えたな。
小波  |あぁ、校門の前で偶然にね。
    |しかしなぁ……。
好雄  |ん?何か言いたそうだな。
小波  |いや、お前にあんな可愛い妹がいるなんてなぁ。
好雄  |あぁそのこと。なんだお前、優美に気があるのか?
小波  |いや、そういう訳じゃ…。
好雄  |いいっていいって、隠さなくたって。
小波  |だから、そんなんじゃないって。
好雄  |そうか?…ま、いっか。
    |あいつも、兄貴にとっては自慢だからさ。
    |まぁ、まだまだ子供だけどね。
小波  |おいおい、いいのか、そんな事言って。
好雄  |いいの。ほんとのことなんだから。
    |お前もそう思うだろ?
小波  |いや、俺の口からはなんともいえないな。
好雄  |あ、そういうこと言う?
小波  |ほらほら、もう始業のチャイムが鳴ってるぜ。
好雄  |はぐらかしたな。まぁ、いいや。弁当ありがとな。
小波  |あぁ、その程度のことなら任せなさい。
    |じゃ、また後で。
好雄  |おぅ。

・校門前(夕方)

優美  |……えぇ?何言うのよ。お兄ちゃん。
好雄  |だって、そうじゃないのか?
優美  |だから、そんなんじゃないんだってばぁ。
小波  |よう!兄妹そろって何やってんの?
好雄  |おう、小波じゃないか。
優美  |あ、先輩。今帰りですか?
小波  |うん。なんか、今朝といい、タイミングがいいみたいだね。
    |で、何の話してたの?
好雄  |いや、優美がさ、お前の……
優美  |わあああああああぁぁぁぁぁ
小波  |ん?俺がどうした?
好雄  |だから、お前のこと……
優美  |やあああああああぁぁぁぁぁ
    |お兄ちゃん、止めないと……
好雄  |止めないと?
優美  |卍固めぇぇぇ!
好雄  |うわぁぁぁ、やめろ優美ぃ、おおおおおおお
小波  |痛そうだな、好雄。
好雄  |おぉい、見てないで助けろぉぉぉぉ。
しばらくお待ちください
好雄  |あぁ、痛かった。マジで入ってたぞ、優美。
優美  |だって、お兄ちゃん、変なこと言うんだもん。
好雄  |だからって、卍固めはないだろ。
優美  |だってぇ……。
小波  |まぁ、いいじゃないか。面白いもの見れたし。
好雄  |……。
    |お前ってほんといい奴だな。
小波  |よく言われるよ。
好雄  |……。
小波  |ん……?
好雄  |……。まぁ、いいや。さて、帰るか。
    |お前も途中まで付き合えよ。
小波  |あぁ、もちろん構わないさ。
優美  |じゃ、行こ行こ。

・下校途中(夕方)

優美  |そうだ、お兄ちゃん。今度の日曜日に遊園地に行くの、覚えてる?
好雄  |はぁ?……?
優美  |ブー、さては忘れてたなぁ。
好雄  |?……あぁ、そういえば。
    |……(にやり)
    |悪い、優美。俺忘れてたわ。
優美  |えぇー?
好雄  |悪い、悪い、俺その日用事が入ってるんだ。
優美  |ブー、お兄ちゃんなんて嫌い。
好雄  |ごめんごめん。悪かったよ優美。
    |あ、そうだ。なぁ、小波。
    |悪いけど、もしよければ今度の日曜日、優美と一緒に
    |遊園地へ行ってくれないか?
小波  |へ?……
    |まぁ、今度の日曜なら別に用事はないけど。
好雄  |そりゃよかった。なぁ、頼むよ。
    |な?優美もそれなら構わないだろ?
優美  |えぇ?……先輩と遊園地へ?……
    |うん、優美、先輩と一緒ならいいよ。
好雄  |よし、それで決まりだ。
    |んじゃ、小波。よろしくな。
小波  |よろしくなって…。
    |んー。ま、いっか。
    |じゃ、優美ちゃん。よろしくね。
優美  |はい、先輩。優美の方こそ、よろしくお願いしますね。
好雄  |あぁ、よかったよかった。
優美  |でもお兄ちゃん。約束破るなんて、さいってい!
    |もうしばらく口聞いてあげないんだから。
好雄  |まぁ、そういうなよ。ごめんな。
    |お、もうこんなとこまで来ちゃったか。
    |じゃ、小波、俺達こっちだから。
小波  |あぁ、そうだな。じゃ。
好雄  |じゃ、またな。
優美  |先輩。日曜日楽しみにしてるからねー。バイバーイ。
小波  |うん、じゃあ、またね。
    |……。
    |それにしても、好雄の奴。
    |ほんとに都合が悪かったのかなぁ?
    |なんか、いやらしい笑みしてたけど……。
    |ま、いっか。