「1996.02.25」リターンマッチはゲーセンで〜紐緒結奈〜
[No.0000000013]柴田
・学校の廊下にて
紐緒 |小波君。
小波 |やあ、紐緒さん。どうしたの?
紐緒 |今度の日曜にゲームセンターに行くわよ。
小波 |え?今度の日曜は好雄と約束が…。
紐緒 |そんなものはキャンセルよ。
小波 |え、えー?
紐緒 |ほら、丁度早乙女君が来たじゃないの。さあ、キャンセルするのよ。
小波 |え、えー?
好雄 |よお、小波。何を話しているんだ。デートの約束か?
紐緒 |そうよ。
小波 |え、えー?
好雄 |ま、まじかよ。
紐緒 |だから、彼とあなたとの約束はキャンセルよ。いいわね?
好雄 |小波、おまえって……、おまえの趣味って……。
紐緒 |趣味って?
好雄 |すばらしいな。^_^; じゃ、日曜頑張ってくれ……。
小波 |おーい、好雄。見捨てないでくれよぉ
紐緒 |じゃあ、今度の日曜、ゲームセンターの前で…。遅れずに来るのよ。
・ゲーセン前
小波 |紐緒さん。待たせてごめんね。
紐緒 |別に、待ってないわ。時間通りだから。
小波 |(ふう、間に合って良かった。待たせたらどうなったことやら…。)
紐緒 |さあ、入るわよ。
小波 |やれやれしかたがない。じゃあ、いかさまで大儲けのコインゲームで
|も……。
紐緒 |どこに行くのよ。こっちよ。
小波 |え?そっちは大形筐体のコーナー、あっ、例の破壊的なシューティン
|グね。
紐緒 |これよ。これをやりなさい。
小波 |え?これ?これは……。どきまきメモリアル?どこかで聞いたような……。
紐緒 |気のせいよ。さあ、これをやりなさい。
小波 |でも見覚えがあるホースや包丁が……。
紐緒 |気のせいよ。さあ、ここに座って。
小波 |シートの焦臭い匂いにもなんだか覚えが……。
紐緒 |気のせいよ。さあ、ここに100円入れて。
小波 |ああっ、このデモに登場するいかにも危ない薬を常用しているという
|風情の女の子は!
紐緒 |あなたもしつこいわね。気のせいって言ってるでしょ?
小波 |いや、違う。これは紐緒さんの「どきめきメモリアル」じゃないか!
紐緒 |何を言っているのよ。そんなはずがないでしょ?ほら、ここにダイドーっ
|て書いてあるじゃない。
小波 |ダイドー?じゃあ、これは缶コーヒーの自動販売機?
紐緒 |え?
小波 |ゲームメーカーなのはタイトーでダイドーはドリンクメーカーでしょ?
紐緒 |……ちょっと勘違いしたようね。メーカーはキムコよ。ほらここに書
|いてあるわ。
小波 |キムコ?すると、これは脱臭剤?
紐緒 |え?
小波 |ゲームメーカーなのはナムコでキムコは脱臭剤でしょ?
紐緒 |……ちょっと勘違いしたようね。メーカーはアトランタよ。
小波 |じゃあ、これはオリンピック……って、さすがに苦しいような…。
|で、もしかして元ネタはアトラス?
紐緒 |元ネタもなにもないわ。。とにかくこれは私のゲームじゃないのよ。
小波 |でもメーカーの名前が3つも書いてあるなんて変じゃない?
紐緒 |そうね。変かも知れないわ。
小波 |でしょ?
紐緒 |だから小波君。ちょっとプレーして調べてみなさい。
小波 |げげげっ。
紐緒 |さあ、早く。
小波 |あいたたたた。急にお腹がいたくなってきた。これはちょっと無理か
|も…。
紐緒 |あなた、頭を抱えて何を言っているのよ。
小波 |え?いや、実は痛いのはお腹じゃなくて、頭なんだ。
紐緒 |何を言っているのよ。今度はお腹を押さえているじゃない。
小波 |あれ?いや、だから……。だから両方痛いんだ。
紐緒 |あら、それは困ったわね。
小波 |でしょ。でしょ?
紐緒 |私が診てあげるわ。さあ、そこに座って。
小波 |え?
紐緒 |さあ、そこに座るのよ。
小波 |そこって「どきまきメモリアル」の座席なんですけど…。
紐緒 |そうよ。そこが一番近いじゃない。
小波 |でも、紐緒さん。100円玉を握り締めてるみたいなんですけど…。
紐緒 |別に気にしなくて良いわ。
小波 |でも、紐緒さん。反対側の手で持っているのは「どきまきメモリアル」
|のヘルメットみたいなんですけど。
紐緒 |病人は気にしなくて良いのよ。
小波 |あっ、あれ?急に痛くなくなったような……。
紐緒 |無理はいけないわ。さあそこに座るのよ。
小波 |で、でも紐緒さん。
紐緒 |なによ。
小波 |5、4、3、2、1
放送 |ほーたーるのひーかーり……。本日の営業は終了しました。
紐緒 |ああっ、いつのまにこんなに時間が…。
小波 |うーん、苦しんでいるうちに思いのほか時間が経ってしまったんだなぁ。
|でもゆっくり休憩したおかげさまですっかり痛みも取れたみたいだ。
紐緒 |くっ、小波駒人、一度ならず二度までも…。
小波 |あー、残念だったなぁ。「どきまきメモリアル」やりたかったなぁ。
|さってゆく小波駒人。
紐緒 |ふっ、さすが私が見込んだ男ね。あの才能、能力。いつかきっと私の
|物にして見せるわ。