「1996.01.03」スキー場にて〜鏡魅羅〜

[No.0000000001]山本

・1995年12月、昼休み、学校中庭

親衛隊 |鏡さん、パンを買ってきました。食べて下さい!
魅羅  |あら、ありがとう。食べさせていただくわ。
親衛隊 |鏡さん、飲み物買ってきました。飲んで下さい!
魅羅  |ありがとう、飲ませていただくわ。
    |(馬鹿な男達…)
    |(所詮男なんて、見てくれに群がるだけなのよ…)
    |(…、あの人…、小波っていったっけ…)
    |(結局作戦がうまく行かなくて諦めたけど…)
伊集院 |おや、これはこれは魅羅君じゃないか。
魅羅  |あら、伊集院君。
    |相変わらず女の子をたくさん連れてますわね。
伊集院 |なに、君の親衛隊には及ばんよ。
    |この学校の男子生徒で君を知らんものはおるまい。
魅羅  |あら、そんなことはありませんわ、ほ〜ほっほっほっほっほ。
    |そんなお世辞を言っても何も出ませんわよ?
伊集院 |いや、僕は世辞を言ったりはせんよ。
    |まあいい、ではそろそろ失礼するとしよう。
魅羅  |ごきげんよう。
    |(そうよね、もうこの学校に私のことを知らない人間なんて…)
    |(小波君だって、もう知ってるはずよ…)
親衛隊 |鏡さん、お考えごとですか?
魅羅  |えっ?
    |別にそういうわけでは無いわ。
親衛隊 |鏡さん、あの、スキーのチケットが当たったので、
    |是非ご招待したいのですが…。
魅羅  |いつなの?
親衛隊 |1月3日です。
魅羅  |そう、よろしくてよ。
    |おつき合いして差し上げるわ。
    |じゃ、そろそろ移動するわよ。
親衛隊 |はい、鏡さん!

・1996年1月3日、午後、スキー場

魅羅  |まったく、自分たちで誘っておきながら、上級コースを滑れる人間が
    |だれもいないというのはどういうことなのかしら…。
    |それにしても男達の視線が痛いわね。
    |まったく、男っていうのは…。
    |がりがりっ!!
魅羅  |きゃあ!!
    |(あ、アイスバーンがこんな所に出来てるなんて!)
    |(前に人が!!)
    |あ、危ない。どいて!
小波  |えっ?
    |ドン!!!
魅羅  |痛…。
小波  |ご、ごめん、大丈夫?
魅羅  |ちょっと、どこ見てすべってるの?
小波  |あ、あの、君の方が「危ない」って…。
魅羅  |ま、私に見とれてすべっていたなら
    |それも仕方の無いことかもね。
    |ほ〜ほっほっほっほっほ。
    |あぁ、この美しさはスキー事故すら引き起こしてしまうのね…。
    |(あぁ、こんな見知らぬ人にまでこんな事言って…)
    |(ほとんど条件反射になっちゃってるんだわ…)
小波  |……。
魅羅  |あら?
小波  |えっ?
魅羅  |あなた…。
    |小波君?
小波  |はぁ、小波ですけど。
    |どっかでお会いしたことありましたっけ?
魅羅  |…、あなたまさか私の事を知らないとでも仰るの?
    |(まだ私を知らない人がいたっていうの?)
小波  |な、何だか分からないけどごめんなさい。
魅羅  |(まぁ、普段から親衛隊に囲まれてるし…)
    |(「顔は知らない」ってこともあるわよね…)
    |そう。
    |じゃあ覚えておくのね。
    |私が「あの」鏡魅羅よ。
小波  |「あの」鏡魅羅さんですか。
鏡   |そう、「あの」鏡魅羅よ。
    |1対1で会えただけでもあなたは幸運よ。
小波  |あの…。
    |非常に言いにくいんですが、「あの」ってどの鏡さんでしょう?
魅羅  |(なんですって〜)
    |(あなた、早乙女好雄から話も聞いてたじゃないの!)
    |(そ、それすらも忘れてるっていうの〜!?)
    |ぶつっ!
小波  |
鏡   |(信じられない…)
    |(どうしてこの人はここまで私を無視できるの!?)
小波  |……!?
    |あ、あの…。
鏡   |私、不愉快だわ。
    |もう帰ります。
小波  |あ、あの〜。
    |シャー
魅羅  |(くやしい、くやしい、くやしい!!)
    |(あそこまで無視されていたなんて!!!)
    |(なぜ?)
    |(あの人に知られてなかったことが、なぜこんなに悔しいの?)
    |(まさか…)
    |そ、そんな訳ないわ!
    |男なんて、男なんて私には復讐の対象でしか無いんだから!
親衛隊 |鏡さ〜ん!
魅羅  |そうよ…。
    |私のことを知ったんだもの…。
    |彼だって今度からは私のことを違った目で見るはずよ。
    |…そうよ、そうに決まってるわ。
    |ほ〜っほっほっほっほっほ。
    |さ、皆さん、今日は帰るわよ。
親衛隊 |はい、鏡さん。