「1996.01.03」スキー場にて〜鏡魅羅〜

[No.0000000001]山本

・学校部活中

清川  |な、なぁ駒人。
小波  |ん?
    |どうしたの清川さん。
清川  |あ、あのさ、冬休みって暇か?
小波  |…、暮れまでは水泳部があるけど?
    |清川さんは休みなのかい?
清川  |あ、いや、あの…。
小波  |清川さんらしくないなぁ。
    |言いたいことはハッキリ言った方がいいよ?
清川  |あ、あのさ、1月3日にスキーに行かないか?
部員男 |なに、スキー?
    |それなら俺も行くぞ。
部員女 |私も!
    |お正月は予定が無くて、どうしようかと思ってたんだ。
    |わいわいがやがや。
小波  |ちょ、ちょっと待てよ。
    |みんなで一斉に言われたって、分からないって。
清川  |……。
小波  |清川さん、みんな行くってさ。
    |…、どうしたの?
清川  |もういい!
    |私は行かない!
    |すたすたすた…
小波  |???
    |変な清川さん。
    |じゃ、行く人は誰だ〜?

・スキー場

小波  |いや〜、気持ちいいなぁ。
    |(スキーも特訓した甲斐があって、上級者コースでも滑れるようになったし)
    |(女の子の尊敬の眼差しが…)
    |…、あれ?
    |誰も居ないぞ?
部員女 |小波く〜ん!
    |小波君もこっちに来て、一緒にやらな〜い?
小波  |ん?
    |何やってるんだ?
部員女 |スノーボードよ。
    |もうスキーなんて古いわよ。
小波  |(す、スキーはもう古いって!?)
    |(お、俺の血のにじむような特訓は一体…)
    |い、いや、俺はこっちですべってるから。
    |(冗談じゃない)
    |(今更スノーボードなんかでかっこ悪いとこ見せられるか!)
    |シャー
??? |あ、危ない。どいて!
小波  |えっ?
    |ドン!!!
??? |痛…。
小波  |(いってぇ〜!)
    |(ってそんなこと言ってる場合じゃない)
    |ご、ごめん、大丈夫?
??? |ちょっと、どこ見てすべってるの?
小波  |あ、あの、君の方が「危ない」って…。
??? |ま、私に見とれてすべっていたなら
    |それも仕方の無いことかもね。
    |ほ〜ほっほっほっほっほ。
    |あぁ、この美しさはスキー事故すら引き起こしてしまうのね…。
小波  |(人の言うこと全然聞いて無いな…)
??? |あら?
小波  |えっ?
    |(お、俺、何にも言ってないよな…)
??? |あなた…。
    |小波君?
小波  |はぁ、小波ですけど。
    |どっかでお会いしたことありましたっけ?
??? |…、あなたまさか私の事を知らないとでも仰るの?
小波  |な、何だか分からないけどごめんなさい。
    |(って、何で俺が謝るんだ?)
??? |そう。
    |じゃあ覚えておくのね。
    |私が「あの」鏡魅羅よ。
小波  |「あの」鏡魅羅さんですか。
魅羅  |そう、「あの」鏡魅羅よ。
    |1対1で会えただけでもあなたは幸運よ。
小波  |あの…。
    |非常に言いにくいんですが、「あの」ってどの鏡さんでしょう?
    |ぶつっ!
小波  |(ん?なんか切れた音が…)
魅羅  |……。
小波  |(わぁ!?)
    |(か、鏡さんの目が燃え上がってる…)
    |あ、あの…。
魅羅  |私、不愉快だわ。
    |もう帰ります。
小波  |あ、あの〜。
    |シャー
小波  |…、何も怒ることは無いと思うんだけどなぁ。
    |帰ったら好雄に電話でもして聞いてみるか…。

・小波の自宅

小波  |あ、そうだ。
    |好雄に電話して、「鏡魅羅」さんについて聞いてみよう。
    |トゥルルルルル、トゥルルルルル…。
好雄  |はい、早乙女です。
小波  |あ、好雄か?
    |小波だけど。
好雄  |なんだ小波か〜。
小波  |なんだよ、俺からじゃ不服か?
好雄  |当たり前のこと聞くなよな。
    |で、今日は何のようだ?
小波  |女の子が俺のことどう思ってるか…、って違う!
好雄  |び、びっくりさせるなよ。
    |どうしたんだよ。
小波  |いや、なんかこう、話が自然とそっちに…。
    |そ、そんなことはどうでも良いんだ。
    |実は…。
    |……
好雄  |お、お前、鏡魅羅を知らないのか?
小波  |知らない。
    |そんな有名人なのか?
好雄  |お前なぁ、前にも話をしただろうが。覚えてないのか?
    |お前ほど、校内の女の子に疎いヤツも珍しいよなぁ。
小波  |分かったよ、良いから教えてくれよ。
好雄  |入学式の帰り、覚えてるか?
小波  |あ?
    |あぁ、お前が人混みの原因を調べに行って帰ってこなかったんだよな。
好雄  |それだ。
小波  |はぁ?
好雄  |その「人混みの原因」が鏡魅羅なんだよ。
小波  |話が見え無いぞ?
好雄  |鏡魅羅ってのは「親衛隊」を持ってるんだよ。
小波  |し、親衛隊?
好雄  |そう、しかも半端な数じゃないぜ〜。
    |1年生男子の約半数は親衛隊に入ってるって噂だ。
小波  |そ、そうなのか。
    |まぁ確かに綺麗な人ではあったけど…。
好雄  |なんなら、スリーサイズとか電話番号とかも分かるけど、
    |聞くか?
小波  |い、いや、今は良いよ。
    |(どこでスリーサイズなんて調べるんだ?)
好雄  |何にしろ、お前その鏡魅羅に舐めた口きいたんだからな。
    |冬休み明けて、学校に行くときには注意しといた方がいいぜ。
    |じゃあな。
    |ガチャッ
小波  |……。
    |どうすりゃいいんだよ。
    |あぁ、大変な事になっちゃったなぁ…。