「1995.06.03」初めの、いっぽ!〜古式ゆかり〜
[No.0000000018]高野
・きらめき高校、運動場
アナ |次はお待ちかね、借り物競走だよ。
|ルールは簡単。出場者の男子はコース途中にある封筒を自由に選んで、中に
|入っているプロフィールの女の子を探しだし、手に手を取って一緒にゴール
|するだけ。
|彼がリードするのかされるのかは、パートナーの女の子次第かな?
|どんな女の子がパートナーになるかは、開けてみてのお楽しみ。
|おっと、一言先輩から忠告しておこう。女の子のプロフィールは微妙に改ざん
|されている事もあるからねっ。それに女の子はぐぐっと大人っぽくなってるか
|もよ。お 気 を つ け て。
|それじゃぁいってみようかぁ!!
小波 |(お気をつけて、か。そんな忠告はこの小波様には無用だぜ。
|(今日の俺はひと味違う。高校生活前半をこの体育祭に全てかけてるからな。
|(この体育祭でヒーローとなって、詩織のハートはいただきだぜ。
|(…初戦、二人三脚は詩織とペアを組んで1着を取ったし滑り出しは好調だ。
|(今度もいいところを見せて、詩織にアピールするぜ。
|(残念なのはあの封筒の中に詩織のプロフィールがないらしいことだな。
|(好雄の情報だから間違いないんだろうが、間違いであってほしいぜ。
|(ともかく、相手の女の子を素早く探し出して一緒にゴールすればいいんだ
|(ろ。足の速い女の子とペアになれるといいけど。
アナ |ゴ〜〜〜ル!!
|今回の彼と彼女はやけに早かったんじゃない?
|今の彼なんか、封筒を開けるのとパートナーを見つけるのがほとんど同時だっ
|たぜ!
|えー、今のは1年の早乙女・朝日奈ペアだ。
|みんな。勝利者の二人に惜しみない拍手を…。
男子1 |いいぞ〜、好雄!
女子1 |夕子ぉ、お似合いよ〜!
小波 |(流石だぜ、好雄。
|(よし、次は俺の番だ。好雄に続くぜ。
担当 |位置について…。よぉ〜い。バンッ!
|バッ!タタタッ…。
小波 |(よし!スタートはバッチリ決まった!
|タタタ…。
小波 |(…封筒を選んでっと。これっ!
|ビリッ。
小波 |(女の子は…古式ゆかり。
|(えっと…、三つ編みの…っと。いた、あの子だ。
|ダッ、タタタ…。
小波 |すみませ〜ん、ちょっと通してくださぁい。
|えっと、君!古式さん!一緒に来て!
古式 |は い ?
女子2 |きゃぁ!ゆかり、御指名よぉ。
女子3 |頑張って、ゆかり!
古式 |私 で し ょ う か。
小波 |(はっ、このリアクション。このテンポ。古式さんって、あの古式さんか?
|(しまった、よりによってスローテンポで決して自分のペースを崩さないと
|(噂される古式さんを引き当てるとは…。ぬかったぜ、小波駒人。
|(しかし、1年生でありながら既にテニス部屈指の強豪と噂される彼女だ。
|(決して運動音痴ってわけじゃないだろうし…。
|(ここはひとつ俺がリードして一着でゴールすれば…。
|よしっ!
古式 |は い ? 何 が よ ろ し い の で し ょ う か。
小波 |い、いや別に。
|それより古式さん、君が俺のパートナーなんだ。一緒に来てくれ。
古式 |ま ぁ、私 が 小 波 さ ん と ペ ア を 組 む ん で す ね。 そ れ で は
| よ ろ し く…
小波 |挨拶は省略。行こう!
古式 |… お 願 い い た し ま す。
小波 |それじゃ古式さん、ゴールまでダッシよろしく!
古式 |そ れ で は ま い り ま し ょ う。
|タタタッ…。
小波 |(ふう。手間取ったけど、2番手との差は思ったほど縮まってないな。
|(みんな女の子を見る目がないぜ。
|(…あ、あれっ。古式さん、ちょっと強く手を握ってるな。俺そんなに強く
|(引っ張ってるつもりはないんだけど…。
|タタタッ…。
小波 |(うっ、古式さん遅い。)
|古式さん?
古式 |は い 。 何 で し ょ う か。
小波 |悪いけど、もう少し早く走れない?
古式 |私 は 十 分 早 く 走 っ て る つ も り な の で す が、ご 不 満 で
| し ょ う か。
小波 |い、いや。決して古式さんが遅いって言うんじゃなくて、ただもう少し早く
|走れないかなぁ、というお願いなんだけど…。
|(こう言ったら同じ事だよなぁ…。)
古式 |こ の ま ま で は、1 着 に な れ な い の で し ょ う か。
小波 |(あぁ、悪いこと言っちゃったかなぁ…。)
|ほ、ほら。2番手が追い上げてくるよ。
古式 |で き る だ け 頑 張 っ て み ま す。
|タタタッ…。
小波 |(まっ、まずい!このままじゃじり貧だ。どうする、駒人!
|チラッ。
小波 |(古式さんも精いっぱい走ってくれてるようだし…。くそっ!
|(に、2番手がくる…ゴールはまだ遠いし…。一着が…、勝利が遠のいてい
|(くのか。
|(どうする?どうする?どうする?
詩織 |(イメージ)駒人君、1着ね。凄ぉい!おめでとう!
|おめでとう!
|おめでとぉぉぉ…。
小波 |(くっ、詩織ぃ!何が何でも1着になったるぅぅぅ!
|古式さん、ごめん!
古式 |は い ?
|バッ!タッタッタッタッ…!
男子2 |おぉ!小波の奴、いきなり女の子を抱き上げやがった。
男子3 |なんて奴。そのままゴールするつもりだぜ。
男子4 |あれって反則じゃねーの?
小波 |(はっはっはっ…。もう少し、もう少しでゴールだ!
|(ちくしょう。2番手の追い上げが早いぜ。並ばれる!
|タッタッタッタッ…。
小波 |はっはっはっ…。
小波 |負けてなるものかぁ!
|タッタッタッタッ…。
アナ |ゴ〜〜ル!!前代未聞ぉ〜ん!1着の彼、パートナーを抱き抱えたまま
|ゴールしたぜ!
|なんてこった。ハッ!
|これって反則じゃないの?なんて野暮は熱い二人のハートにいいっこなしだ。
|1着は…。一年生、小波・古式ペアだ!
小波 |やった!やったぜ〜!
男子2 |おい。小波の奴、女の子抱えたままはしゃいでるぜ。
男子3 |あの野郎、ふざけやがって…。戻ってきたらふくろにしてやる…。(--;
男子4 |でもやっぱあれって反則じゃねーの?
小波 |やたー!1着ぅ。
古式 |あ の 〜。
小波 |やったよ古式さん。1着だ!
古式 |小 波 さ ん、そ ろ そ ろ 降 ろ し て い た だ け ま せ ん か。
小波 |は?…あ、ごっ、ごめん。
古式 |ふ う 。 少 し め ま い が し て し ま い ま し た。
小波 |だ、大丈夫?古式さん。
古式 |小 波 さ ん が 突 然 だ っ こ し て 走 り 出 す も の で す か ら、
| び っ く り し て し ま い ま し た。
|そ れ に ず い ぶ ん と 強 く 抱 き し め ら れ て い た の で、息 苦
| し か っ た で す。
小波 |そ、そうだったの?ごめんね。
|俺夢中だったんで思わずだっこしちゃったんだ。
|(…女の子を…だっこして走った?体育祭の競技で…。これって、すっごく
|(印象悪いんじゃない、詩織に…。
古式 |は ぁ …。1 着 に な っ た よ う で す ね。お め で と う ご ざ い
| ま す。
小波 |あ、ありがとう。古式さんのおかげだよ。
|(よくよく考えてみれば、いきなり抱き抱えられて動じなかったんだから…、
|(古式さんのおかげだよなぁ。それにしても…まずいよなぁ、これって。
古式 |そ う で す か。そ う 言 っ て い た だ け る と 私 も 嬉 し い で す。
小波 |えっ?そう…。そうなの?
|(嬉しいって、どういう意味だ?)
教師 |おい、小波!いい加減に席戻れよ。体育祭でいちゃつくんじゃない。
|それにな、今のはやりすぎだぞ!後でちょっと職員室に来なさい。
小波 |は、はい。すみませんでしたぁ。
|…じゃ、古式さん戻ろうか。
古式 |は い。そ う い た し ま し ょ う。
小波 |あのー、古式さん。
古式 |何 で し ょ う か。
小波 |さっきは、ごめんね。俺夢中でさぁ、自分で何してたのかわかってなかった
|んだよ。それでさぁ、あんなことしちゃって…迷惑だったろ?
古式 |…。
小波 |今考えるとさぁ、どきどきしちゃうよな。古式さん、抱えて走ったなんてさ。
古式 |…。
小波 |ごめんね。古式さん、怒ってるだろ?
古式 |…あ の 〜。
小波 |えっ?
古式 |お 気 に な さ ら な い で く だ さ い。私 は 嬉 し か っ た で す よ。
小波 |は?
古式 |1 着 に な れ ま し た し…。
小波 |あ、あぁ…。
古式 |私、 運 動 会 の 種 目 で 1 着 に な っ た こ と、一 度 も な い ん
| で す。で す か ら …、嬉 し か っ た で す。
小波 |そ、そう。よかった、怒ってなくて。
古式 |そ れ で は こ れ で 失 礼 い た し ま す。
小波 |あ、うん。それじゃまた…。
|(…またって、何がまたなんだ?…1着になれて嬉しい、か。何か別のこ
|(と考えちゃったよ。何だかなぁ、俺って。…古式さん、怒ってないって雰
|(囲気じゃなかったなぁ。悪いことしちゃったよな。
男子2 |おぃ!小波ぃ。
小波 |?何か用か?
男子1 |ずいぶんと嘗めたまねをしてくれるじゃないか。
男子3 |見せつけやかって、このぉ。
男子4 |あれって反則じゃないか?
男子2 |ひとりでおいしい思いをしやがって…。
小波 |ちょ、ちょっと待て。誤解だ、あれは事故なんだ。
男子1 |誤解も6階もないぜ、この野郎!ぽかっ。
小波 |痛っ。そんなお約束な…。
男子3 |なぁにが事故だ。あれが事故なら警察は要らないぜ!ばきっ!
小波 |うがっ。今こそ警察呼んでくれ〜。
男子2 |ひとりでおいしい思いをしやがって…。どかっ!
小波 |やめろって…、おい!やめろっ〜!
|……。
小波 |(酷い目に遭ったなぁ。…席について応援でもするか。
|(あ、詩織…。
|や、やぁ。あのさぁ…。
詩織 |ふんっ。(プイッ)
小波 |(あ…、目つきも態度も冷え切ってる…。
|(だっ、だめだぁ…。完全に嫌われたぁ。うぅ、俺はなんてことしたんだぁ。
|(全力を傾けた体育祭だったのにぃ…。栄光はもう戻らないのかぁ。
好雄 |よう、小波。さっきのはなかなか派手なパフォーマンスだったな。
|おまえもやるねぇ〜。
小波 |よ、好雄ぉ…。
好雄 |それじゃぁ、この好雄様がいいこと教えてあげるからありがたく思えよ。
|古式ゆかりの電話番号はなぁ…。
詩織 |あなた達って、最っ低ね!
|ガタッ!スタスタスタッ。
小波 |あ、詩織ぃ…。
|好雄!馬鹿者ぉ。詩織に誤解されたじゃないか。おまえなぁ…。
好雄 |ん。いいっていいって。気にすんな、小波。おまえにはでっかい未来がある
|じゃないか。あはははは…。
小波 |おまえなぁ…。くぅ…。(;_;)
好雄 |嬉し泣きか?小波。このこのぉ!
小波 |(;_;)(;_;)(;_;)
小波 |こうして俺の体育祭は幕を閉じた。薔薇色の高校生活と一緒に…。(;_;)
好雄 |なぁ〜に、人の噂も75日ってな。あはははは…。
小波 |…こいつだけは許さん。(--;
好雄 |おい、小波。じゃれるなよ。おい、やめろって。
|おまえ!目がマジだぞ!おい、その手に持ってるのは何だっ…。