「1995.02.14」登場〜館林美晴〜

[No.0000000017]権田

・小波自宅

母   |受験票は持ったの?筆記用具は?ハンカチは?
小波  |うるさいなあ、全部持ったよ。
母   |お弁当を忘れてるじゃない、ほら。
    |大体、あんたの志望校って工業高校じゃなかったの?
    |急に「きらめき高校を受験する」なんていいだして。
姉   |どうせ隣の詩織ちゃんが受験するからでしょ?
小波  |もう、姉ちゃんまでよけいなこと言わないでよ!
    |それじゃ行って来るからね!
    |ばたん!
姉   |あーあ、行っちゃったよ。
    |でも、母さん、あいついつの間に手続きしてたの?
    |昨日まできらめき高校受けるなんて一言も言ってなかったじゃない?
母   |私だってびっくりしたわよ。今朝急に受験してくるって言うんだもの。
    |手続きだってこっそり一人でやってたみたい。
    |まあ、受験なんてものは私たちには見守ることくらいしかできないんだし、
    |あの子の好きにさせましょ。
    |それよりあんた学校行かなくていいの?もう時間よ。
姉   |いっけなーい、それじゃいってきまーっす。
母   |はい、いってらっしゃい。車に気をつけてね。
    |(でも、あの駒人がねえ。本当にきらめき高校に受かっちゃう事になったら
    |詩織ちゃんに感謝しなきゃ。)

・きらめき高校校門前

小波  |かなり早くついたな。詩織ももう来てるのかな?
    |(詩織のことだから難なく合格できるんだろうけど、問題は俺だな…。
    |結局最後まで進路指導の先生には無理だと言われ続けたしなぁ。)
    |とにかくがんばるか。
    |(ん?受験票が落ちてる…まさか詩織のじゃないよなぁ)
    |−−−小波、ちょっとどきどきして受験票を拾う−−−
小波  |えっと、「かんばやしみはる」っていうのか?
    |へー結構可愛い子だな。髪型も詩織みたいだし。
    |ま、受験票を無くしちゃって困ってるだろうからとりあえず受付にでも
    |届けておくか。

・受付前の公衆電話

女の子 |だからぁ、受付にも交番にも届けられてないし、
    |鞄の中にもポケットの中にも入ってないのよ。
    |家の方に忘れちゃってない?
小波  |やけにやかましい声だなあの子、ずいぶん焦ってるみたいだし…
    |あれ?あの子受験票落とした子じゃないか、ちょうど良かった。
小波  |もしもし?
女の子 |え?電話ならちょっと待ってよ、いまそれどころじゃないの!
小波  |あの、そうじゃなくて…。これ。
女の子 |しつこいわねぇ、え?
    |そっ、それ私の受験票!?
    |あなたが拾ってくれたの?ありがとう!
    |あ、お母さん、受験票見つかったわ。
    |心配させちゃってごめんなさい。もうすぐ試験だからそれじゃあ切るね。
    |ガチャ
女の子 |どうもありがとうございました。
    |受付で受験票がないのに気づいて、探してたんです。
小波  |そう、良かったね。ちょうど受付に届けに行こうかと思ってたんだ。
    |それじゃ、もうすぐ試験だからこれで。
女の子 |本当にありがとうございました。
    |何かお礼がしたいから名前だけでも教えて…ってもう行っちゃった。
    |でも、あの人ちょっとかっこよかったな。
    |さて、私も受験がんばらなきゃ。
    |…試験終了後、教室にて。
小波  |ふぅーやっと終わったか。
    |でもやっぱ有名私立校だけあって難しかったな、
    |土壇場になって本命を変えるんじゃなかったかなぁ。
    |でも、もし受かってたら、そのときは詩織に…
女の子 |こ・ま・ん・ど・く・ん
小波  |え?
    |し、詩織?
    |あれ?そっちは美樹原さんだっけ?
美樹原 |こ、こんにちは。
詩織  |駒人くんもここ受けたんだ。
    |確か工業高校を受験するって言ってなかった?
小波  |うん、最初はそのつもりだったんだけどね、
    |いろいろと思うところがあって…ね。
詩織  |ふぅーん、そうなんだ。
    |でもさっき鼻の下が伸びてたわよ。
小波  |えっ、な、何でもないよ。
    |それより一緒に帰らない?
詩織  |えっ、でも今日はメグのところに用事があるから途中までなら。
小波  |それじゃ行こうか。
詩織  |う、うん。メグ、いい?
美樹原 |わ、私は別に…。

・きらめき高校校門

詩織  |それで駒人君、今日は試験どうだったの?
小波  |それがあんまりできなくて、…ちょっときついかなって感じだけど。
詩織  |そうなの…、でもみんな一緒に受かるといいね。
    |そうだ、駒人君知ってる?
    |この高校の校庭にある一本の木のこと…。
小波  |え、なにそれ?知らないよ?
詩織  |あのね、あの木の下で、…
女の子 |あ、あの…今日はありがとうございました。
小波  |へ?
詩織  |「へ?」じゃないわよ、私の話聞いてるの?
小波  |聞いてるよ。
    |ただ、呼び止められた気がしたから。
女の子 |今日は私の受験票を拾ってくれてどうもありがとうございました。
    |おかげできちんと受験もできましたし、
    |これ今朝のお礼です、ちょうど今日がバレンタインだったから
    |そこのコンビニで買ってきたんです。受け取って下さい。
小波  |え、えーっと、「かんばやし」さんだっけ?
女の子 |ちがいますよ。「たてばやしみはる」って読むんです。
    |お互い受かるといいですね。
    |それじゃっ。
小波  |あ、ありがとう。
    |(今年はバレンタインが受験日だったから貰えないかと思ったけど
    |なんかラッキーだなぁ)
    |(なんか背後で殺気を感じる…)
    |し、詩織?
詩織  |ふぅーん、良かったねチョコ貰えて。
    |私、急用を思い出したから先に帰るね。
    |行きましょ、メグ。
美樹原 |う、うん。でもいいの?詩織ちゃん?
詩織  |いいわよ、早く行きましょ!
小波  |おーい、詩織ぃ…。ああ、行っちゃったよ。
    |なんであいつ怒ったんだろ?
    |お礼をもらっただけなのに。
    |(でもあの子ちょっと可愛かったな、髪型も詩織みたいだったし。)
    |さて、結局一人になっちゃったし帰るか…。

・館林美晴自宅

館林  |今日は色々あって疲れちゃったな。
    |でも、受験票拾ってくれた彼ちょっとかっこ良かったな。
    |一緒にいた女の子二人いたけど彼女だったりするのかな?
    |ううん、きっとそんなことないよね、私にもチャンスがあるかもしれないし。
    |私の顔覚えてくれたかな?
    |ちょっと地味な格好してたからすぐに忘れちゃうかな?
    |(制服だったから当たり前と言えばあたりまえだけど)
    |髪型でも変えてみるかな?
    |いまのストレートじゃちょっと見た目のインパクトってもの無いしね。
    |どんな髪型にしよっかな…。